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メアリー・ブレア 展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 7月 16日

「ふしぎの国のアリス」コンセプト・アート|1951年|© Disney Enterprises,Inc.

「ピーター・パン」コンセプト・アート|1953年|© Disney Enterprises,Inc.

この夏、財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館と日本テレビ放送網株式会社、日本テレビ文化事業団は、企画展「メアリー・ブレア展」を開催いたします。

メアリー・ブレア(1911年-1978年)は、米国オクラホマ州に生まれ、大学在学中に水彩画家としてそのキャリアをスタートさせました。その後、幾つかのアニメーションスタジオを経て1939年にウォルト・ディズニー社に入社しました。

そこでウォルト・ディズニー(1901年-1966年)と出会い、彼女の才能が開花。「シンデレラ」(1950年)、「ふしぎの国のアリス」(1951 年)、「ピーター・パン」(1953年)など、いくつもの作品のカラー・スタイリストとして、素晴らしい色彩感覚を活かした功績を残しました。アメリカでもまだ働く女性に厳しかったと言われる時代に、実に多くの作品に関わり、広く尊敬を集めたのです。フリーとなった後は、絵本の挿絵、舞台や広告のデザインなどを数多く残しました。さらに、ウォルト・ディズニーからの依頼でデザインした「イッツ・ア・スモールワールド」は、現在でもディズニーランドの人気アトラクションとして多くの人々に喜びを与えています。

大人と子供の目線がミックスされ、見る人に純粋な喜びを与える彼女のアートセンスは、独特な魅力に溢れており、当時のディズニー作品のみならず、現在も多くのアニメーション作家に影響を与え続けています。彼女の作品は、2006年夏に東京都現代美術館で開催され好評を得た「ディズニ-・アート展」で初めてその一部が紹介されました。その際、もっと作品が見たいという声が数多く寄せられました。それに応える形で、今回ご親族やウォルト・ディズニー・アニメーション・リサーチライブラリーをはじめとするたくさんのご協力を得て、たった一度だけ、彼女の人生を巡る展覧会としてご紹介できることとなりました。

本展は、スタジオジブリ、および三鷹の森ジブリ美術館の全面的な協力のもと、アニメーション映画におけるカラー・スタイリストという、これまでにない視点でお送りする初めての展覧会です。本来は資料として保管され、アメリカ国外を出ることはめったにない貴重なディズニー初期アニメーションにおけるアート作品や、ディズニーランドのアトラクション・デザイン作品を中心に、大規模に一般公開するものです。展覧会では2500点を越える膨大な作品群から精選した約500点の作品に加え、彼女の生涯を様々な写真、愛用品、映像を通して時代の流れと共に分かりやすく展示します。

ウォルトが信じたひとりの女性-。アメリカに生きた、奇跡とも言える彼女の才能にどうぞ触れてみて下さい。この夏、皆さんにとってきっと忘れられない体験になります。

※全文提供: 東京都現代美術館

最終更新 2009年 7月 18日
 

編集部ノート    執筆:平田剛志


もし、現代美術を好んで見るあなたが、本展をテレビ局が主催する家族向けないしデート向きのディズニーアニメの展覧会だから敬遠して見ないとしたら、それは大きな間違いである。 なぜなら本展は、水彩画、アニメーション、絵本、デザイン、壁画、テーマパークのコンセプトワークまで多岐に渡って躍動感ある世界観を創造し続けたメアリー・ブレアの展覧会であり、現代美術展以上に充実した内容で私たち観客に驚きと喜びを与えてくれる展覧会だからである。 総点数500点以上に上る本展の中で、特に目を奪われるのは1階展示室の絵本の挿絵、広告デザイン、「イッツ・ア・スモールワールド」の壁画、デザインワークであろう。カラリストたるメアリー・ブレアの豊饒な色彩、一瞥するだけで温もりが伝わるようなキャラクター造形は、時を経ても古びず、むしろ現代においてこそ見られるべき作品である。 また、日本ではメアリー・ブレアの名はほとんど無名であるにも関わらず異例の回顧展が実現したことを高く評価したい。


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