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ざわめきのあらわれ
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 6月 24日

左「Untitled」/ 木、アクリル絵具、墨、油性ペン / 2013年 / (参考作品)
右「Weekend」シリーズより/ スキャンした新聞、ガラス、額 / サイズ可変 / 2009年 /(参考作品)

この度、バッカーズ・ファンデーションと NPO 法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]は、7 月 13 日(土)から 7 月 27 日(土)まで、「ざわめきのあらわれ/Divided Against Ourselves」展を白金高輪の山本現代にて開催いたします。
本展は、海外のアーティストを東京に招へいするアーティスト・イン・レジデンス・プログラムの成果展となり、本年はアレグラ・パチェコ(コスタリカ)とアルベルト・ロドリゲス・コジア(グアテマラ)の 2名が、その 3ヶ月の生活から見えた日本の発見、不可思議さ、思いがけぬ出会いなどを新作として発表します。 コスタリカ出身のパチェコは、主に写真やドローイングを制作しています。「The Boobs(乳房)」(2012)では、コスタリカのラ・カルピオ地区の女性たちとの共同作業により、乳房の形をしたソフト・スカルプチャーを制作しました。移民女性の労働問題や社会状況を浮き彫りにするこの作品の売り上げは全て、その地区の女性支援に充てられました。本展では、東京の密集する建築や都市構造から見える過剰なまでの秩序や法則、そして人々を飲み込んでいくかのように増殖し続ける街の気味悪さやおかしみを、写真やドローイング、コラージュなどの新作として表現します。
初来日となるロドリゲス・コジアは、インターネットや新聞から集めた画像など、他者の創作物を引用し、映像やドローイングを制作しています。2008 年には、グアテマラのアーティストとともに、街で見つけたグラフィティや風刺画など、匿名の表現を集める「La Favorita (みんなの一番)」プロジェクトを行い、社会に溢れる声無き声の集合体を展示しました。今なお政治的に不安定なグアテマラに住むコジアは、氾濫するメディアイメージを巧みに借りながら、社会のあり方を嘲笑することを企みます。本展では、グアテマラと東京の自身の経験をモチーフに、半自叙伝的な物語を、新作の版画作品として発表します。
アートコレクターの台頭やアートマーケットの拡大により、近年、中南米のアートシーンは世界の注目を集めています。その一方で、それを構成する一つひとつの国の複雑な社会情勢や文化、また、創造力を、私たちは知る機会が少ないといえます。
地下鉄の中、ビルの隙間、街を歩くサラリーマンや学生、その出会いや観察の全てが制作のひらめきとなる彼らの体験を通して世界を眺めてみることは、私たちに、「知り得ぬもの」を想像する力を与えてくれるといえるでしょう。

[作家コメント]
アレグラ・パチェコ

写真やドローイング、インスタレーションを制作している。今回の東京滞在は 2 度目となり、前回の滞在時には、その様子を一連の写真作品「Japan」として制作した。そのシリーズには、映画『ブレードランナー』を思わせる近未来的な建築のほか、飲み屋街、ラブホテル、地下鉄のホームに寝転がる泥酔したサラリーマンの様子など、秩序の中にある雑多な「東京」の様子が写し出されている。コスタリカにおいては、女性たちとの共同制作において、彼女たちの労働環境や社会的な立場を想起させる「The Boobs」により、社会の中で不可視になりがちな抑圧構造をユーモラスに浮かび上がらせた。


アルベルト・ロドリゲス・コジア

テレビやインターネット、新聞の写真など、既存のメディアからモチーフを引用し、ドローイングや映像作品、版画を制作している。そうした作品の数々は、時に、植民地時代の歴史や、グアテマラの複雑な政治・社会に対する辛辣なアイロニーとして表現される。作品「Weekend(週末)」(2009)では、国を引き裂く発端となったグアテマラ内戦(1960-1996)を題材とし、語られない事実に対するシニカルな視点を一連のペインティングとして発表した。新聞の画像をスキャンし、大仰な色で塗りつぶした政治的な場面は、あえて安っぽく額装され、出来の悪い家族写真のように配置されている。それらは、ゲリラ、和平協定、腐敗した経済、政治、社会状況など、コジアと同世代の若者が巻き込まれてきた権力に対する嘲笑が込められている。

[作家プロフィール]
アレグラ・パチェコ/Allegra Pacheco
(1986年コスタリカ生まれ、ロンドン在住)
・ 2011 スクール・オブ・ビジュアル・アーツ(ニューヨーク)写真学科卒業
・ 2012 ウィンブルドン・カレッジ・オブ・アーツ(ロンドン)修士課程在籍
・ 2010 「White Box」SCOPE Art fair(マイアミ)
・ 2010 「New York Photo Festival」DUMBO BK (ニューヨーク)
・ 2012 個展「Tokyoscapes」ジャスト・アナザー・スペース(東京)


アルベルト・ロドリゲス・コジア/Alberto Rodríguez Collía
(1985年グアテマラ生まれ、在住)
・ 2007 エスクエラ・デ・アルテ 10(マドリード)にて彫刻を学ぶ
・ 2007 グアテマラ初の彫刻専門工房「Taller Experimental de Grafica」を友人と設立
・ 2010 「セントラル・アメリカン・ビエンナーレ」(ニカラグア)
・ 2012 「Estampida」Des.Pacio ギャラリー(コスタリカ)

レセプション: 7 月 13 日(土)18:00 - 20:00


全文提供:山本現代
会期:2013年7月13日(土)~2013年7月27日(土)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月・祝
会場:山本現代
最終更新 2013年 7月 13日
 

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