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鎌田あや:新世代への視点2009
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 6月 15日

≪my mirror≫2009年 | 手鏡、つけまつげ | copyright(c) Aya KAMATA

“夢の中に想い出がおしよせる”| ミクストメディア | copyright(c) Aya KAMATA

今年も京橋、銀座界隈の画廊が若手作家を紹介する展覧会「新世代への視点2009」が始まります。ギャルリー東京ユマニテは一昨年、若手作家の実験的な発表の場としての企画 humanite lab で初個展を行った鎌田あやを紹介いたします。

鎌田は現在、多摩美術大学大学院絵画専攻の2年に在籍。2007年「humanite lab」 での初個展には、鎌田自身や友人の毛髪を集め、コサージュに仕上げた繊細で美しい作品を発表。また、昨年春の卒業制作作品は、真紅のビロードで作った大掛かりなドレッサーに、使い込まれた大量のぬいぐるみやおもちゃを取り付けた大作で、「ト-キョーワンダーウォール立体部門」で審査員長賞を受賞しました。

鎌田の作品制作においての興味は、女性としての自分自身、女性なる不思議な生き物の存在にあります。日々、他者の視線にさらされ、さまざまな抑圧の中で過ごす女性たちは、その状況を受け入れ、「女性」という役割を楽しんでいるかのようにも見えますが、「本当の自分とは何なのか」という、自分探しの旅を永遠に続ける少女なのかもしれません。

近作「mirror」は、女性の象徴ともいうべき手鏡に、つけまつげをびっしりと植え付けた作品です。見知らぬ誰かが使い込んだ手鏡ですが、その女性はどんな顔で覗き込んでいたのでしょうか?

鎌田は、実際に女性が使っていた身の回りにある、化粧道具、洋服、ぬいぐるみなど人の記憶と痕跡が残った中古の素材で、女性本来の繊細さ、強さ、美しさをインパクトのある独特の作品に仕上げていきます。今回の新作展は、姿見につけまつげを施した作品や中古の洋服、映像などを組み合わせたインスタレーションとなります。

作家コメント
私はわたしとしてワタシを生きるしかない。
世界を覗くことは、わたしを覗くことだ。
わたしとあなたの中には、世界が広がっているのだ。
まだ、「決定的」なわたしやあなたが、わたしは分からない。
わたしは相変わらず、曖昧で、宙ぶらりんだ。
そして、世界も相変わらず、曖昧で、交わることができない。
それゆえに、この世界はとても謎に満ち満ちていて、魅力的で、あきることがない。
もちろん、分からないがゆえに、絶望的になったり、クヨクヨしたり、涙を流したりもする。
それでも、わたしはこの世界を信じている。
わたしを信じている。 あなたを信じている。

※全文提供: ギャルリー東京ユマニテ

最終更新 2009年 7月 27日
 

編集部ノート    執筆:小金沢智


鏡や衣服、化粧道具など、〈女〉の隠喩のような事物を大量に用いて作り出されたインスタレーション。映像や音楽も組み合わされており、空間はとかく雑然としている。つけまつげがびっしりと付けられた鏡などもあり、大量の〈女的なもの〉が醸し出す幻惑的な雰囲気に酔ってしまった。作家コメントにある「まだ、「決定的」なわたしやあなたが、わたしは分からない。」という言葉、すなわち「私は〈私〉がわからない」というムードは私が千田哲也のペインティングに強く感じる要素であるのだが、鎌田の作品もまた、〈女的なもの〉を抽象化し突き詰めることでその先に到達しようとする態度が認められる。


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