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フィロソフィカル・ファッション 1:FINAL HOME
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2012年 11月 26日

 

目まぐるしく移り変わる流行、それを支えるファストファッションの隆盛が顕著ないま、衣服の意味を問い直し、一貫したコンセプトでファッションを提案し続けるクリエイターを紹介するシリーズ「フィロソフィカル・ファッション」。その第一弾として、ファッションデザイナー津村耕佑によるプロジェクト「FINAL HOME」を取り上げます。
「家をなくしてしまったとき、人を最後にプロテクトするのは服になる」
ーーこのコンセプトをもとに生まれたナイロンコートは、「究極の家」を意味する「FINAL HOME」と名付け られました。コートに備えられた多数のポケットに、新聞紙を詰めれば防寒着に、非常用グッズを入れれば避難着になります。
1994年の「FINAL HOME」誕生から現在までに、日本は、阪神・淡路大震災、東日本大震災という未曾有の災害に見舞われました。そして津村はファッションデザイナーとしての使命を軸に、ファッションと社会や環境との関係性を考察し続けてきました。
本展では、「FINAL HOME」の活動を通して、「衣服」そして「ファッション」の役割について考えます。

[作家コメント]
フィロソフィカル・ファッション展に向けて

美術館は都市を構成する要素の一部であり、芸術を通じて人の美意識と関わり人間について考える機会を提供する公共機関です。
現代では多様な芸術を保護管理する為、美術館の備品も多岐にわたります。 空調、展示台、保護ケース、照明、プロジェクター、モニター等々それ以外にも人と共に持ち込まれる衣服、雑誌、携帯電話など美術館内は雑多な物で溢れている訳です。
しかし、多くの人は展示された美術品に見入るばかりで展示台や保護ケース、他人の服装や持ち物は気にも留めないでしょう。 もちろんそれらは鑑賞の邪魔にならないように考慮されています。また、余計なことは気にしないことが鑑賞するうえでの暗黙の了解にもなっていると思います。
固定観念を捨て状況を俯瞰的に眺めることが出来れば空間に美を発見することもできます。更に状況に対する注意力が高まれば危険を予感することにも繋がると思います。
そこで美術品の展示に使用する備品や、私達の生活の中にある日常品にスポットを当て、見落とされている物の存在を再考するインスタレーションを考えました。

その中心となるのがFINAL HOMEであり、表地と裏地が生み出す空間を区分けする事でポケットとして活用出来るナイロンウェアーです。ポケットは両開きのジッパーで自由に開閉できます。使用しない時は表地と裏地の関係に戻るのでポケットの存在を認識され難いミニマルなファッションとしても通用します。
都市型サヴァイバルウェアー FINAL HOMEは、安心を纏う「究極の家」として活用できる最初で最後のウェアーであると同時に、私が行うデザイン活動の思想の象徴として存在しています。このインスタレーションを通じて、人間と衣服、都市と自然について改めて考える機会になれば幸いです。

津村耕佑

[作家プロフィール]
津村耕佑 (つむら・こうすけ)

1959年 埼玉生まれ。
1982年 第52回装苑賞受賞。
1983年 三宅デザイン事務所に入社。
1992年 第21回現代日本美術展準大賞受賞
1994年 FINAL HOMEを設立。
パリコレクションと東京コレクションに初参加。
第12回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。
2001年 第3回織部賞受賞。
2008年より武蔵野美術大学空間演出デザイン学科教授。

<主な展覧会>
1992年 「第21回現代日本美術展」 東京都美術館、京都市美術館ほか巡回
1994年 「ART TODAY 1994:サンクチュアリ(聖域) - 20世紀末芸術における「聖域」をめぐる一考察」
セゾン現代美術館(東京)
1995-96年 「モードのジャポニズム」 パリ市立衣装美術館、TFTホール(東京)
※ 同展は1994-2004年、国外各都市美術館に巡回 
1998年 「MODE MEETS MEDIA\'98 THE AIR WARE -コンピュータグラフィックスと衣服のあいだ
の出来事」 神戸ファッション美術館
1999年 「身体の夢−ファッション or みえないコルセット−」 東京都現代美術館
2000年 「ヴェネツィア・ビエンナーレ 第7回国際建築展」 (ヴェニス)
2001-02年 「JAM:東京—ロンドン」 バービカン・アート・ギャラリー(ロンドン)、
東京オペラシティアートギャラリー(東京)
2002年 「日韓ファッションフェスティバル」 奨忠体育館(ソウル)、幕張メッセ(千葉)
「第4回上海ビエンナーレ」 上海美術館
2003年 「Virgin Road」サムジースペース(ソウル)
2004-05年 「衣服の領域」武蔵野美術大学(東京)、霧島アートの森(鹿児島)
2004年 「フュージョン:日本の建築とデザイン」 イスラエル美術館(エルサレム)
「HAPTIC 五感の覚醒」 スパイラルガーデン(東京)
2005年 「椅子のデザイン」 埼玉県立近代美術館
「SAFE: Design Takes On Risk」 ニューヨーク近代美術館
2007-08年 「美麗新世界:当代日本視覚文化」 北京大山子芸術区「798」内各所(北京)、広東美術館(広州)
2008年 「シェルター×サバイバル」 広島市現代美術館
2009-10年 「TOKYO FIBER 09 SENSEWARE」 トリエンナーレデザイン美術館(ミラノ)、
ホロン・デザインミュージアム(イスラエル)ほか巡回
2009年 「津村耕佑キュレーション DREAM CONSCIOUS かたちになりかけた夢」
YUKA CONTEMPORARY(東京)
2010-11年 「Future Beauty: 30 Years of Japanese Fashion」
バービカン・アート・ギャラリー(ロンドン)、ハウス・デア・クンスト(ミュンヘン)
2012年 「Future Beauty 日本ファッションの未来性」 東京都現代美術館
「ドクメンタ13」 (カッセル)

関連プログラム

アーティスト・トーク
FINAL HOME のデザイナー津村耕佑が、ブランドコンセプトや活動について語ります。
[日時] 2013年3月10日(日) 13:30〜14:30
[会場] 金沢21世紀美術館 レクチャーホール [定員] 先着60名 [料金] 無料
フラワーパズル ワークショップ
花を詰め込んだFINAL HOMEを着ている人を見かけたら、声をかけてみてください。
一緒にフラワーパズルをつくって美術館に花を咲かせましょう!
[日時] 2013年3月10日(日) 11:00〜12:00、13:00〜16:00 (15:00よりフラワーパズルをつなぎ合わせます)
[会場] 金沢21世紀美術館 会議室1ほか [料金] 無料 (どなたでも参加できます)


全文提供:金沢21世紀美術館
会期:2013年1月12日(土)~2013年6月30日(日)
時間:10:00 - 18:00(金・土 - 20:00)
休日:月(ただし、1月14日、2月11日、4月29日、5月6日は開場)、 1月15日、2月12日、5月7日 ※2013年度については変更する場合があります。
会場:金沢21世紀美術館
最終更新 2013年 1月 12日
 

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