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澤崎賢一:さかいにはさま、る しんこうけい
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2012年 6月 26日

Yoshiko, Xiānglán is I, 2012, video installation

今回テラでの初個展となる澤崎は、現在京都を拠点に活動しています。 本展覧会では、作家がこれまで問題としてきた芸術における自明性への問いかけとともに、その実践をより歴史的・社会的な出来事と接続した地点から捉えなおす試みを行います。歴史的な出来事と個人体験の交差する場面を、作家の祖父が残した手記のなかより敷衍することから始まっています。歴史的事実の自明性を揺さぶるなかから、未完結なるものとしてのアクチュアリティを見いだし、それを現代に対峙させることを目指しています。 新作として、1930〜40年代に日本人ながら中国人歌手として中国で活躍した李香蘭に作家自身が扮した映像作品などを発表予定です。

[作家コメント]
本展覧会の主たるモチーフはふたつあります。わたしの祖父澤崎正恵が生前に残した日記のなかに記されたメッセージや記録と、李香蘭(山口淑子)という中国人として一世を風靡した日本人歌手・女優です。

李香蘭は1937年に満洲映画協会の女優となり、中国・日本で人気を博し、戦時中は上海の映画界で活躍しました。後の1945年8月9日、李香蘭は上海競馬場でリサイタルを開催しています。本当は日本人であるにもかかわらず、中国人として認知されていた李香蘭は、漢奸(中国人として祖国を裏切った)容疑で中華民國の軍事裁判に掛けられ、危うく処罰されかけました。

李香蘭が満洲映画協会からデビューした1937年、祖父は第二次上海事変の勃発にともない、陸軍の一兵士として上海に上陸しました。祖父はこの戦争で瀕死の重傷を負い、命からがら日本に送還されました。彼はこのときの体験が忘れられず、終戦後、小学校教員として勤務した祖父は、生涯にわたって彼の体験について後世を生きるわたしたちに語って聞かせました。

わたしはこれまでの作品制作において、芸術における自明性への問いかけを喚起させるために、いくつかの方法論を実践してきました。本展覧会では、この実践を祖父と李香蘭というふたつのモチーフを介して試みることによって、個人的な体験と歴史的な出来事が絡まりあう場面から、未完結なものとしてのアクチュアリティを見いだし、それを現代に対峙させることを目指しています。

[作家プロフィール]
澤崎 賢一 Kenichi Sawazaki

1978年生まれ。岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー卒業。プライベートな問題を出発点として、芸術や歴史における自明性への問いかけを継続させるために、さまざまな方法論による実践を行っている。近年の主な展覧会に、The same thing or similar things, and an action.(AD&A gallery/大阪 ※高橋耕平氏との共作を展示)、P&E2009(ARTCOURT Gallery/大阪)、JEANS FACTORY ART AWARD 2008(高知市文化プラザかるポート/高知 ※グランプリMを受賞)など。

オープニングレセプション/トークイベント 6月9日 18:00−20:00

<トークイベントゲスト略歴>

井上 文雄|INOUE Fumio
CAMP/オーガナイザー。CAMPは同時代のアートについて考えることを目的としています。アーティストやキュレーター、ディレクター、批評 家、研究者、学生などと関わりながら、トークイベントや展覧会、パーティー、ジャーナル(『Ra+: 経験と芸術生産』『Na+: ナショナリズムと芸術生産』)などを企画。
http://ca-mp.blogspot.com/

橋本 誠|HASHIMOTO Makoto
1981年東京都生まれ。横浜国立大学教育人間科学部マルチメディア文化課程卒業後、フリーのアートプロデューサーとして活動開始。東京文化発信プロジェクト室にて「東京アートポイント計画」の立ち上げを担当(2009-2012年)後、再びフリーに。様々なプロジェクトのプロデュースや企画制作、アートプロジェクトの担い手育成に取り組んでいる。「Tokyo Art Research Lab」事務局長兼リサーチャー。主な企画に都市との対話(BankART Studio NYK/2007)、KOTOBUKIクリエイティブアクション(横浜・寿町エリア/2008~)。共著に「これからのアートマネジメント」(フィルムアート/2011)など。

司会・進行
島貫泰介|SHIMANUKI Taisuke
美術ライター/編集者。1980年生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒。カメラマンアシスタント、美術館スタッフを経て『美術手帖』『アサヒカメラ』などで文章執筆や編集に携わる。


全文提供:ギャラリー・テラ・トーキョー
会期:2012年6月9日(土)~2012年7月7日(土)
時間:12:00 - 19:00
休日:日・月・祝
会場:ギャラリー・テラ・トーキョー
最終更新 2012年 6月 09日
 

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