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ポッシブロ:走って流して山ができた
編集部ノート
執筆: 田中 みずき   
公開日: 2011年 11月 05日

画像提供:ポッシブロ

   東京芸術大学の学生らによる展覧会が銭湯で開かれている。脱衣所はもちろん、浴室にも作品が設置され、入浴しながら鑑賞できる点が面白い。
   浴室天井に吊るされた巨大な布は、二藤建人による作品。午後の早い時間には天井の窓から差す光に照らされ、鮮烈である。長方形のシンプルな形状だが、両端を固定された布が中央にかけてたゆむ曲線の美しさに目を奪われる。抽象的に楽しむだけでなく、子供と一緒に鑑賞するならば船の帆や波など様々なものに形を重ねて想像するのも楽しいだろう。素材が雑巾という点にも驚かされる。銭湯で使われてきた多くの雑巾たちに思いを馳せるのも興味深い。
   男湯と女湯の境の岩壁に掛けるように展示された、桑田朋以による陶製の白い鳥は、観ることの叶わない壁の向こうが意識されて興味深い。また、女湯脱衣所に設置された中野岳の、女性の下着を使ったインスタレーションは、男湯からもちらりと見える展示になっている。これも、銭湯で男湯と女湯が分かれている建築を生かした展示と言えるだろう。少々下着のバリエーションが乏しく、もっと様々な年齢や人格を想像させる下着が使用されていたり、男性バージョンがあったりすると、作品の見え方も違っていたかも知れない。そんなことを、鑑賞後に男女で語り合うのもまた、面白いだろう。若手作家による、銭湯という場を生かした展覧会、ぜひ老若男女で楽しみたい。

最終更新 2011年 11月 05日
 

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