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樋口佳絵:針がとぶ
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 9月 28日

《ドロップ》エッチング、アクアチント、スピットバイト|2010年 | Copyright© Kae Higuchi and KIDO Press, Inc. | 画像提供:キドプレス

キドプレスでは昨年の10月に引き続き、2回目となる待望の樋口佳絵展。宮城県仙台市出身である樋口は、現在も同所にて制作を続けています。その中から、未発表の銅版画3点と、数点の新作のペインティングを展示いたします。

樋口の描く少年少女たちは、いつか何処かで見かけたことのあるような姿で不思議な空間の中にたたずんでいます。 また表情からは、あどけなさや素直さ、時に悲しげで時にユーモラスな、彼らの心の一片を覗き見る事ができます。

その描写は、日々の移り変わりをもう一人の自分が、どこか離れた場所から、つぶさに見つめているかのようです。  タブローでは油彩と古典的なテンペラ技法を併用しながら、繊細で柔和なタッチや、温かな色合いを生み出しています。 また銅版画では柔らかな色調や、腐食の偶発性によって出てくるマチエールにシャープなエッチングのラインが際立ち、作品の世界感に新たな彩りを添えています。存分に樋口の魅力を感じ取る事が出来る事でしょう。

作者のつぶやき
悲しいゆめ。
起きた時そう思ったけれど、何が悲しかったのだろう。
輪郭を辿り、どんなストーリーだったのか探そうとしても、
いつも、それはあっという間にサラサラとほどけて、消えていってしまうのです。

小さな時の記憶もおんなじで、曖昧な断片だけが散らばっているばかり。
繋げようとすると、そこから滲むように消えて白い空間になってしまいます。

もどかしいものです。
でも、心に残り続ける大切なもののような気がして。
そんな、余韻のような心持ちを表現できればと思っています。

樋口 佳絵 Kae Higuchi
宮城県仙台市 出身
1997   東北生活文化大学生活美術学科卒業
2005   宮城県芸術選奨新人賞 受賞
現在  仙台市に住む

主な個展
2010    キドプレス、東京
2008   「エンシンリョク」 西村画廊、東京
2007   「耳鳴り」 西村画廊、東京
桜華書林、長野
2005   「N.E. blood 21 樋口佳絵展」 リアス・アーク美術館、気仙沼
「24℃」 西村画廊、東京
2004    ギャラリー五番街、仙台('03)
カフェ・マティス、仙台('03)
2002   「公開制作/つくる私を描く私」 宮城県美術館創作室

主なグループ展
2011   「清澄サイレントアートオークション」清澄アートコンプレックス(キドプレス)、東京
2007   「アートみやぎ 2007」 宮城県美術館
「VOCA展 2007」 上野の森美術館<大原美術館賞>
2006   「新現美術協会展」 仙台メディアテーク<会員賞>(’03, '04, '05)
2005   「耳の器-20枚の綴られない本」 リブリッジエディット・仙台
2004   「第13回青木繁記念大賞展」 石橋美術館 久留米、郡山市美術館
「第21回グラフィックアートひとつぼ展」 ガーディアンガーデン・東京
2001   「上野の森美術館大賞展」 上野の森美術館、東京(’99, '00)
2000    河北美術展 藤崎本館<青森県知事賞>
1998    河北美術展 藤崎本館、仙台<仙台市長賞>

全文提供:キドプレス


会期: 2011年10月29日(土)~2011年12月3日(土)
会場: キドプレス
オープニングレセプション: 2011年10月29日(土)18:00~20:00

最終更新 2011年 10月 29日
 

編集部ノート    執筆:田中みずき


《ドロップ》
エッチング、アクアチント、スピットバイト|2010年
Copyright© Kae Higuchi and KIDO Press, Inc.
画像提供:キドプレス

   物憂げだったり、孤独だったり、我が物顔だったりする子供の風情が、繊細な銅版画の線で掬いとられている。また、大きな画面に明るい色調で描かれているが、詩的な雰囲気を醸しだす絵画も見逃せない。
   小作品ながら印象的なのは、子供が意識をしているとしないであろう表情を捉えている版画作品だろう。観ていると、回りの子供の姿や、小さい頃、誰しもが見ていながら忘れていた友達の表情を思い出すのではないだろうか。よく観ている作者の目と感受性が生みだす世界に静かに入り込みたくなる展示である。








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