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リクエストトップ30 - 過去10年間の歩み
編集部ノート
執筆: 平田 剛志   
公開日: 2011年 8月 19日

©TAKAHASHI COLLECTION / TABLOID GALLERY
photo by hirose hisaya

テレビやラジオの音楽番組でリクエストをするのは、視聴者やリスナーである。では、本展のタイトル「リクエストトップ30」とは、だれが選んだのか。答えは、日本全国の美術館に勤めるキュレーターである。本展は、美術館のキュレーターたちが過去に展覧会開催のために高橋コレクションへ出品依頼をした作品を統計し、最も出品依頼の多かったトップ30の作品が展示されるグループ展である。

では、どの作品がナンバー1だったのか。会場配布のリーフレットには明確に書かれてはいないが、会田誠《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》(1996)、村上隆《ズザザザザザ》(1994)、奈良美智、草間彌生など有名・人気アーティストの代表作が並ぶ。サブタイトルには「過去10年間の歩み」とあるものの、90年代半ばの作品も含まれているので、ここ20年の日本の現代美術シーンにとって、重要な作家の作品をまとめて見ることができる。図版などで見る機会が多い作品もあり、1度は実作品を見ておきたい作品ばかりだ。

本展のユニークさは、全国のキュレーターたちによる展覧会出品リクエストをもとに、個人の好みや嗜好で集められた高橋コレクションの展覧会を構成したことにある。そこにコレクター高橋龍太郎氏の意見や考えは反映されていない。プライベートな個人コレクションが、他者であるキュレーターたちのリクエストよって、パブリックな場で鑑賞されることとなった作品とは何だったのか。リクエストトップ30から見えてくる一個人の思惑を越えた、まなざしを考えて見ると興味深い。

加えて、複数の作品が序列化されるランキングによって、1作品では見えてこない時代や流行の変化を考察することも可能だろう。「過去10年の歩み」とは、何だったのか、そして、トップ30から抜けている作品とは何かを考えてみると、次の時代へのヒントが感じられるかもしれない。

今後は高橋コレクションへの出品依頼の統計数をまとめ、詳細な分析すると、新たな知見が明らかとなるかもしれない。リクエスト件数の結果をアーカイブし、時代や流行の傾向を分析する資料として活用すると、どんな時代が表れるだろうか。高橋コレクションのさらなる展開も楽しみだが、今後のコレクター研究にも期待したい。

最終更新 2015年 10月 31日
 

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