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菅野由美子 展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2008年 12月 06日

“two_10” (2008) | 60.6×60.6cm oil on canvas | copyright(c) Yumiko Sugano | Courtesy of Galerie Tokyo Humanité

菅野由美子は1960 年東京生まれ。東京造形大学在学中に作品の発表を始め、’86 年のシドニー・ビエンナーレ、’89年の「第3回アジア美術展」(福岡市美術館、横浜美術館、韓国国立現代美術館巡回)など、数多くの国内外の展覧会に参加。’80 年代前半から女性美術家が流行的に台頭したいわゆる「超少女」の一人として注目を集めました。

当時、菅野は木、鉄、粘土などを素材にコンセプチュアルな立体作品を発表していましたが、’92 年の個展を最後に制作活動を中断していました。そしてこの4 年ほど前から、日常身の回りにある小さな置物などを油彩で丁寧に描く仕事を再開し、昨年4 月に15 年ぶりとなる個展で以前の立体から一転、古典的な油彩の小品群を発表し好評を頂きました。昨年の展覧会は、本人も実験的な展覧会と位置づけた発表でしたが、展覧会後は、現時点での等身大の作品を制作することに確信を持って仕事を続けられたと言います。

16-17 世紀のヨーロッパで見られた静物画を思わせる、均一に塗られた茶系の背景。その中に菅野自身が様々な国を旅して集めた壷、ビン、器、皿などが、茶事の見立てのように物語に沿って選ばれていきます。しかしながら、それらはどことなく擬人化された肖像画のようでもあり、また、光線までもが計算された静謐な画面は、何事も起こらない淡々と過ぎていく平和な日常の気配を感じますが、その静けさの奥にある力強い存 在感は、見るものが不思議と自身の内面と向きあうべく作用へ導かれるようでもあります。彼女の作品はストイックであるがゆえに、小さな画面から無限の広がりへとイメージは膨らんでいきます。 今回の個展は、前回以降に描かれた新作を中心に10 数点発表いたします。ユマニテの新年幕開けを飾る菅野由美子の新作展。新しい年に絵画と対峙する醍醐味をじっくりと味わっていただきたいと思います。

【作家コメント】
絵を描いている気がしないことがよくあります。壁塗り職人とか器の絵付け師とか、そういう気分の方が近いような時です。なるべくすべてを均等に描く努力をしています。あるいは、ある誰かにとってとても日常的な器を並べることで、その器をその誰かに見立てて 描いているのかもしれないと思う事もありますが、でも気のせいかもしれません。 この絵は、たとえば同じ本を何度も何度もくりかえし読むというような、そういった個人の内省の力によって描かれていると思います。

※全文提供: ギャルリー東京ユマニテ

最終更新 2009年 1月 13日
 

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