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包む-日本の伝統パッケージ
編集部ノート
執筆: 石井 香絵   
公開日: 2011年 5月 01日

釣瓶鮓 [奈良県]
画像提供:目黒区美術館

「木」・「竹」・「笹」・「土」・「藁」・「紙」と素材別に展示された日本の伝統的な梱包品や容器の数々は、戦前から活動を続けたグラフィック・デザイナー岡秀行による収集品である。1964年に東京の白木屋で初めて「日本の伝統パッケージ展」として展示され、国外からも注目を集めた岡のコレクションは、後に「TSUTSUMU」(包む)をキーワードに世界各地で巡回展示された。

長期的な話題を呼んだこれら収集品は目黒区美術館の所蔵となり、現在「包む-日本の伝統パッケージ展」として再び展覧されている。漬物や味噌を入れる木の容れものや蔦の紐、竹かごに入った水羊羹や瓢箪の薬味入れなど一点一点が目を楽しませる。かつてこれらが日用品だった暮らしへの憧れを喚起させる品ばかりだ。菓子折など贈答品用の容器や包装は、中身をより良く見せるための心配りやもてなしからなる職人技を思わせる。一方で保存用の容器や藁細工など、生活のなかで洗練され、自然とその形になったものもあるのだろう。小銭を紙で包んだだけの「おひねり」や、笹の葉で二つ折りにしただけの「ささあめ」など、簡素な包装はかえって「包む」行為に内在する美意識の原型を浮き彫りにしている。

用途や技量の異なる伝統品にデザイナーとしての岡の視点を重ねることで、パッケージそのものの魅力や、その根底にある価値観に気付かされる。淘汰され消えてしまった手技から今も受け継がれるかたちまで、充分に観覧を楽しみたい。

最終更新 2015年 11月 02日
 

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