| EN |

大橋文男:しっぽをだいてねむるように まぶたをだいてねむる
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 4月 08日

《森と歩く人》2009 December|映像インスタレーション
Copyright © Fumio Ohashi
画像提供:INAXギャラリー

やわらかな光がさしこむ森の奥、緑の草の上で白いちいさな紙人形が輪になって踊っています。広がったスカートの女の子、帽子にズボンの男の子たちが、風が吹くたび、ひらりと舞い、くるりと回り、静かな演舞は軽やかにそっと続けられ、白と緑の色が揺れてまぶたの裏にいつまでも残るようです。白い切り紙のひとがたに糸を通して木に繋ぎ、風に任せるというシンプルな手法ながら、引き込まれて見続けてしまう映像作品です。

身のまわりのひそかな囁きと気配を交わしながら引き寄せ、物語を与えていく大橋文男の作品は、どこかで手を離して偶然性にゆだねる軽やかさと透明感、そして綺麗で少し静かな怖さが漂っています。私たちはそっと息をひそめてその世界に身を浸すのです。

東京藝大の卒展では「森と歩く人」で教室全体を使った映像インスタレーションを行いました。窓辺のベッドに横たわる老女がぽつりぽつりと囁く言葉とともにカーテンが翻り、白い切り紙の人形が風に舞う落ち葉のようにくるくると踊る映像と、教室の机ひとつずつに点されたライトの下に置かれた紙人形。暗い教室に浮かぶその二つが繫がり、どこかへ攫われてしまう感覚を覚える作品です。

大橋文男は、一度社会人となってから大学受験し、美大に在籍しながら作品をつくり始めました。若い同級生たちと表面的な年齢を取り払った関わりが生まれていった中には、経験からくる言葉を投げずに見守るという作品づくりにも共通した姿勢があります。

今展では、新作の映像と立体を含めたインスタレーションを行う予定です。光の粒子に包まれる映像と、小さな声が秘密を囁くような静かな気配をぜひ会場で体験してください。

大橋文男(おおはし・ふみお)
1963年 石川県生まれ
2010年 東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻 卒業
2011年 東京芸術大学大学院美術研究科絵画専攻 在籍

受賞歴
2009年 上野芸友賞/東京芸術大学
2010年 買上賞/東京芸術大学
2010年 O 氏賞/東京芸術大学

展覧会歴
2008年 コジマアートプラザ/東京・台東区
Continue Art Project 2008 /仁上家/新潟・上越市
2009年 上野芸友賞展/東京芸術大学/東京・上野
2010年 SPRING BOARD 2010 展/東京・JR 上野駅
gallery 坂巻 個展「うしろ耳で聞こえてくる声」/東京・京橋
「あさがお展」旧坂本小学校/東京・台東区
瀬戸内国際芸術祭関連事業 小豆島AIR art project /香川県・小豆島
CAF -N 展/埼玉県・埼玉県立近代美術館

パブリックコレクション  東京芸術大学美術館

※全文提供: INAXギャラリー


会期: 2011年5月2日(月)-2011年5月28日(土)
会場: INAXギャラリー2
アーティスト・トーク: 2011年5月13日(金)18:00 - 19:00

最終更新 2011年 4月 13日
 

関連情報


| EN |