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久保俊太郎:畜生道
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 4月 07日

Copyright© Shuntaro Kubo
画像提供:ギャラリー・テラ・トーキョー

久保は「人間の果てなく滑稽な欲望」を淡々とした表情の動物を象徴的に用いる事により描いています。

アーティスト・ステートメント
展覧会タイトルの「畜生道」とは、仏教思想において魂が輪廻する6つの世界の内のひとつです。
牛馬など畜生の生きる世界とされる「畜生道」は、その6つの中では下から3番目に位置しますが、本能で生きることを強いられ、人間に使役されるという点で、救いのない世界だとされています。
元々、動物をモチーフの中心として制作していましたが、この題材に興味が湧いたのは、身の回りの生活や世の中での出来事を観察する中で、人間と動物の距離感や、関係のあり方の多様化に目が向いていたからです。
一般的にヒト対動物、特に家畜やペットと言うと、その畜生道の定義のように、支配し、管理されるといったような一方的な関係を想像しがちですが、人間があらゆる欲望を動物に押しつけて巻き込んでいく中で、その関係は時に対等になったり、逆転したり、さまざまな形に変化しているように見えます。それはまた時に深刻だったり、滑稽だったり、あらゆるシチュエーションに姿を変えます。
特に人の生活の真っただ中に生きている「愛玩動物」と呼ばれる動物たちには人々の欲望が顕著に表れていると思います。あるべきであった距離感が見失われ、崩壊する一方で、主に擬人化という形で表れる欲望の眼差しは強くなるばかりです。それは自然環境と人間の関係の縮図であるようにも感じられます。
私は絵の中では多くの動物を擬人化させていますが、擬人化そのものには否定的でありたいと思っています。しかし、擬人化の手法を使うことで、逆にそういった見方を打ち砕く手段にしたい、と今は考えています。動物たちがみんな無表情・無感動な振る舞いをしていたり、軍団として表現することで個性をなくしているのはそのような狙いを含んだものでもあります。
人間の支配下でも、厳しい大自然の中でも、どんなに理不尽な環境でも、楽園のような環境でも、淡々と、日々変わらずに生きている動物の姿と、それをどうにかして思い通りにしたいと思ってしまう、自分を含めた人間の果てなく滑稽な欲望、このふたつの関係を表現していきたいと思っています。

久保俊太郎 Shuntaro Kubo
1986年埼玉県生まれ。2008年武蔵野美術大学造形学部日本画学科卒業。2010年武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻日本画コース卒業。

※全文提供: ギャラリー・テラ・トーキョー


会期: 2011年4月23日(土)-2011年5月21日(土)
会場: ギャラリー・テラ・トーキョー
オープニングレセプション: 2011年4月23日(土)18:00 − 20:00

最終更新 2011年 4月 23日
 

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