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高見晴惠:二河白道
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 3月 09日

画像提供:高見晴惠
Copyright © Harue Takami

主題となる〈二河白道〉は、 天災や人災が多発した12世紀から13世紀にかけて人々の苦悩や不安を救うために 称名念仏を勧めた法然上人の思想の支えとなった唐の善導大師の教えです。本展では法然上人八百年御遠忌にあたります本年、 この〈二河白道〉をテーマに制作するインスタレーション作品(仮設装置的な空間設営)を広く一般に公開します。 寺の本堂を舞台とし、動的な火の河、静的な水の河、それにまっすぐに延びる白道を現出させることによって、 通常とは異なる新たな体感空間を創出します。八百年前に人々の苦悩を消し去るべく広められたこの教えを、 現代の感性で表現する作品空間を通して、今を生きる人々に直に体感してもらうことで、 環境や社会に不安や困難が充積する現代に何が必要かを再認識するきっかけとなれば幸いです。

二河白道について
一人の旅人が、西方に向って百里千里の長い道を行こうとする時、二つの河に忽然と出会った。一つは火の河で南にあり、一つは水の河で北にあった。河幅は 百歩ほどであったが、深さは底知れない。その中間に、東岸から西岸にかけて一本の白道が通っているが、幅はわずか 四.五寸。浪は荒れ狂って道を浸し、炎は燃え盛って道を焼いていた。旅人は広野に一人、茫然と立ちつくしていた。すると、その後方からは群賊や悪獣・毒虫 が、競って殺そうと迫ってきた。進むに進めない絶体絶命の状況に、旅人は悩み恐れる。だが、座して死を待つよりはと狭い白道を渡ろうと決意する。その時突 然東の岸から、固く決意してこの道を尋ね行けとの声がする。また、西の岸からも、心を正しく持ち迷うことなく来たれ、汝を守ろうと呼ぶ声がする。何歩か進 むと、今度は東岸の群賊らに、この道は険悪で渡ることができないから戻ってこい、危害は加えないから、と呼びかけられる。しかし、旅人はこ れに動揺することなく、一心に道を念じて前進すると、たちまち対岸に到達することができた。ここに、旅人はさまざまな苦難から免れ、西岸に善き友を得て、 限りない喜びを得ることができたのである。  東京堂出版『法然辞典』より

高見晴惠 Harue Takami
現代美術作家/1959年京都生まれ。京都精華大学卒業。寺院などの歴史的建物や現代建築の公共スペース空間に、細工を施した布や紙を大量に敷きつめるインスタレーション作品を発表。 展示空間を変容させたり、あらたに創出させたりとスケール豊かな展開を試みる。1996年より活動拠点を京都とスウェーデンに広げ国内外を問わず広く共感を得る作品を制作発表している。

高見晴惠〈二河白道〉ウェブサイト: http://www006.upp.so-net.ne.jp/nigabyakudo/

※全文提供: 高見晴惠


会期: 2011年4月7日(木)-2011年4月12日(火)
会場: 安養寺(京都府京都市左京区粟田口山下町8/tel. 075-771-5339)
アクセス: 京都市営地下鉄東西線「蹴上駅」1番出口徒歩5分


最終更新 2011年 4月 07日
 

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