荒木経惟:愛の劇場 |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2011年 1月 27日 |
タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムのオープニング展覧会。 〈愛の劇場〉と書いてあるキャビネ判の箱が出てきた。開けてみると150枚ほどのプリントが入っていた。65年頃のプリントだ。その頃オリンパスペンFでガチャガチャ撮って、わざと熱現像とかイイカゲンにフィルム現像してイイカゲンにプリントしてた、その頃の私と女と時代と場所が写っている、表現しちゃってる。あの頃から〈愛の劇場〉とか言ってたんだねえ。まーそれにしても、イイねえ、イイ写真だねえ、デジタルじゃこうはいかねえだろ。 荒木は63年に千葉大学工学部を卒業し、電通へ入社。「電通時代はアタシの修業時代」と自身が語るように、72年に退社するまでの9年間、会社の枠組みにとらわれない様々な実験的撮影活動を行いました。同時に64年頃からスケッチブックにプリントを直接貼り付けた手作りの写真集を作り始め、70年には会社の機材を利用して私家版写真集『ゼロックス写真帖』(全25巻+番外篇1篇)を刊行するなど、写真集の編集方法をラディカルに追求します。 68年に電通の別部署に勤務していた青木陽子(旧姓)と出会った荒木は、3年後の71年に彼女と結婚。同年に限定1,000部として自費出版した『センチメンタルな旅』には、二人の新婚旅行の模様を極私的な視点から撮影した写真作品が時間軸に沿って淡々と綴られ、今日に至る約40年の間、荒木の写真に対する信念であり続けた、「被写体との(極めて濃密な)関係性」が早くもこの段階で確立されていたことが伺えます。 今回の個展では、荒木が電通勤務時代の65年前後に撮影した未発表キャビネ判作品100点あまりを展示いたします。昨年、古希(70歳)を迎えた写真家の原点を是非この機会にご高覧ください。 作品集「愛の劇場」2月18日発売予定 ※全文提供: タカ・イシイギャラリー 会期: 2011年2月18日(金)-2011年3月26日(土) |
最終更新 2011年 2月 18日 |
荒木の電通社員時代、65年に撮られた作品が並ぶ。小さなモノクロの画面に収まるのは、街やホテルに居る女たちだ。猥雑さや刹那や熱気が画面からにじみ出す。撮られた女たちと同じ場所で時間を過しているような錯覚にさえ陥る。
熟練の写真家が持ち続けた、変化しない被写体への姿勢が垣間見えて面白い。