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青木千絵:URUSHI BODY
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 12月 14日

PHOTO: BODY08-1・BODY08-2/椿原天満宮/石川
撮影:池田ひらく|画像提供:INAXギャラリー

鎮守の森の奥、神社の本殿の両脇座位置に、だらりと下がった人体下部2体。漆黒に光る等身大のリアルな足指から、ふくらはぎ、太股へとその視線を移していく先は大きなお腹のように膨らみ、ゆるやかなカーブを描いて天井へと突き抜けていきます。まるで天から大木のかたちを借りて命が降臨したような厳かさ、そして、どこか深い情念をたたえた圧倒的な迫力です。

青木千絵は金沢美術工芸大学工芸科出身の29 歳。人体をモチーフに漆の技術をもちいて「BODY」シリーズを制作しています。先の金沢市内の椿原天満宮に展示された作品は約3mの高さがあります。青木は、支持体にスタイロフォームを使うことで軽量化を図り、大きな作品を制作することを可能にしています。どこまでも吸い込まれそうな透明感に満ちた漆黒に覆われたかたちは、漆工芸の美しさを再認識させます。

青木自身はその世界を「孕むということには限定していませんが、生命的なものはどこかにイメージしており、かたちが膨らんでくるような感じになっています。また、天と繋がっているようなイメージもあり、現実と非現実が重なるような世界を表現しています。」と話します。

「BODY」シリーズには、二人の人間がおしくらまんじゅうをしているようなかたちの作品もあります。ドロリと不気味に黒光りする球体から等身大の足が4 本、ニョッキリと現れ、力が拮抗しているように見えるもの、一方が這いつくばってもう一方に圧されているものなど、日常生活や制作における感情の喜怒哀楽、葛藤をその都度、相反するかたちとして表現しています。

青木はこうした作品が生まれたきっかけを、「漆の艶を見ると、ブラックホールに自分だけが放り出されるような恐怖感があると同時に、どこか柔らかく心地いい存在が近くにあるような不思議な感覚をおぼえた」からと語ります。

今展では280cm の高さの作品と、二人の人間のかたちの作品など、新作も含めて3 点を展示致します。無限の広がりを感じさせる美しい漆黒に包まれた、生命力あふれる力強い造形で、新しい年の初めを寿ぎます。

青木千絵(AOKI Chie)
1981 岐阜県生まれ
2005 金沢美術工芸大学美術工芸学部工芸科卒業(日本漆工奨学賞受賞)
2006 金沢美術工芸大学大学院修士課程美術工芸研究科修了
2010 金沢美術工芸大学大学院博士後期課程美術工芸研究科
工芸研究領域漆・木工コース修了(芸術博士号取得・大学作品買い上げ)
現在金沢のアトリエにて活動

個展
2006 ギャラリー手/東京
2007 ギャラリー手/東京
2009 ギャラリーアート・コンセプト/石川
2010 ガレリアフィナルテ/愛知

グループ展
2006 「TAMA VIVANT2006 今、リズムが重なる展」多摩美術大学八王子キャンパス絵画東棟ギャラリー、みなとみらい線みなとみらい駅地下3 階コンコース/東京・横浜
2006 「第45 回北陸中日美術展」金沢21 世紀美術館/石川
2008 「TAMA VIVANT Ⅱ2008 イメージの種子」多摩美術大学ギャラリー、みなとみらい駅地下3階コンコース/東京・横浜
2008 「金沢アートプラットホーム2008」椿原天満宮、金沢21世紀美術館/石川
2009 「アートフェアULTRA002」スパイラル/東京
2010 「第1回金沢・世界工芸トリエンナーレ」リファーレ2 F、金沢21 世紀美術館/石川
2010 「漆芸の未来を拓く-生新の時2010-」石川県輪島漆芸美術館/石川
2010 「会津・漆の芸術祭」会津若松市/福島
2010 「漆そのあたらしい表現を巡って」喜多方市美術館/福島

コレクション
金沢美術工芸大学/石川

※全文提供: INAXギャラリー


会期: 2011年1月7日(金)-2011年1月28日(金)
会場: INAXギャラリー2
アーティスト・トーク: 初日1月7日(金)6:00~7:00pm

最終更新 2011年 1月 07日
 

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