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池田学:焦点
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 11月 15日

《Gate》2010年
紙にペン、インク|22×27cm|撮影:宮島径
(c)IKEDA Manabu, Courtesy Mizuma Art Gallery

昨年はおぶせミュージアム・中島千波館(長野)にて美術館での初個 展を成功させ、国内外様々な展覧会にも出品を重ねてきた池田。本展後には、文化庁の海外研修制度による1年間のカナダ滞在制作を控え、今後も更なる飛躍が期待されています。

「興亡史」(2006年)や「予兆」(2008年)など、大作のイ メージが強い池田ですが、今回は全ての作品を22×27cmという小さな画面に描きました。小さなサイズを選んだことについて、「(これまでは)部分を積み上げ、外へ外へと膨らんでいくといったダイナミズムが面白かったが、内へ内へと入っていく世界にも大きな絵にはない面白さが潜んでいるのではないか」と新たな世界へのチャレンジを語っています。

そして今回、池田は「これまでの一つの大きな全体から小さな部分を 覗き込む」のとは逆に、「小さな部分にも焦点を当て、そこから外に広がっている大きな世界を想像する」作品を制作しています。展覧会タイトルの「焦点」はここから着想されたものです。

新作の一つ「Gate」では、荒涼とした海原に突如として四角い“フ レーム”のようなものが立ち上がり、フレームの内側には高速道路を走る車やビルの灯りが輝く都市の夜が潜んでいる様子が描かれています。灯台や釣り人などが描かれていることから、そのフレームは堤防であることが想像されますが、タイトルの通り、海原と都会という相反する世界をつなぐ奇妙な「Gate」なのでしょうか。この海原はどこに行き着くのか、フレームの向こうの都市ではどんな世界が広がっているのか・・イメージの断片には答えがない分、見たことのない風景の前で私たちの想像はどこまでも飛躍していけそうです。

子どもの頃から魚釣りや虫取りをして時を過ごすことが多かったとい う池田の作品には、彼にとって親しみのある“自然”がモチーフとしてよく描かれています。本作でも、自然が時に全く違う表情を人間に見せることを具現化し、新しい物語の世界を生み出しています。

また、先の細い丸ペンで1本1本描き込まれた線はさらに精度を上 げ、まるで彫刻刀で画面を刻みこんでいくかのように立体的で繊細な質感を生み出しています。細かな線の積み重なりが細密画の作家と呼ばれることが多い所以ともいえますが、その卓越した技術力と共に、何よりも作品ごとに全く違う世界を描き出す池田のユーモアあふれる想像力と表現力に圧倒されることでしょう。

時を忘れ、純粋に「見る」 行為の楽しさを教えてくれる池田の作品。今回は、一話一話が際立つ短編集のように、観る側に深い余韻を残す展覧会となることでしょう。

そしてこの度、池田初の作品集が羽鳥書店より刊行されます。12月中旬の刊行に先立ち、本展にて先行販売を行いますので、ぜひこちらもご覧いただけたらと思います。

※全文提供: ミヅマアートギャラリー


会期: 2010年12月8日(水)-2011年1月15日(土)
冬季休廊: 2010年12月26日-2011年1月6日

最終更新 2010年 12月 08日
 

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