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佐藤未希:Mountain Messenger
編集部ノート
執筆: 平田 剛志   
公開日: 2010年 10月 15日

《white storm》油彩、パネル|1620×1303mm
画像提供:Yoshimi Arts
Copyright © Miki Sato

佐藤未希の絵画は不穏な気配と戦慄を感じさせる。描かれる人物たちは滲み、暈され、溶け、奇形的、不気味な存在に見える。だが、見続けていると崇高な存在として立ち現れてくる。

佐藤のモチーフとなるのは、実在の人物ではなく映画や古い写真だという。その上に何千枚とドローイングを重ねていくことで、佐藤の絵画は生み出される。現代絵画において、映像イメージを基にすることは珍しくないが、佐藤の描く肖像群は写実性にノイズが混入するような絵具の動きや痕跡が画面に現れることで、不穏でファナティックな要素を人物から感じさせる。だが、滲んだ色彩が作り出す画面の統一感が、描かれる人物に対する感情を恐れから平穏へと変へていく。

佐藤は初期にはより奇形的な人物を描いていたが、徐々に人物が形を成してきたように見える。この異形の人物たちが今後どのように成長するのか。人間の根源的な存在を表象する佐藤未希の今後を期待したい。

最終更新 2015年 10月 31日
 

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