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松村有輝:瀕死の彫刻
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 7月 07日

画像提供:Take Ninagawa|Copyright © Yuuki Matsumura

2007年に京都市立芸術大学修士課程を終了し、現在は東京を拠点に活躍する彫刻家、松村有輝のTake Ninagawaで二度目となる個展。

京都市立芸術大学で彫刻を専攻した松村有輝は、卒業制作展で滑り台の前後を入れ替えた大きな立体作品「目ブレ(2007)」を発表して以来、既に実在するものを錬金術的に変化させ、時には素材にダメージを与え
用途を失わせ、もののもつ魅力を引き出す方法で彫刻作品を創ってきました。例えば前展「泥の中の金(2009)」では、「ボキ (2008-09)」というスタジオで偶然見つけた二つに折れた木片の再現を試みた作品や、自動車事故の局部を再現しマルチプルにすることで、事故の痕跡を再生可能な彫像として紹介したアルミニウムの作品「無題 (2009)」、部屋の片隅に脱ぎ捨てられていたTシャツを幾層にも重ね自立させた胸像「無題 (2009)」、またポルノフラフィーを一枚ずつしわくちゃに丸めて積み重ねた裸婦像の集積「Flesh(2009)」を紹介致しました。それらはユーモアのセンスを備えた、現代版の「もの派」を思わせる、不条理系ミニマリスムのフォルムを創りだしています。

今展「瀕死の彫刻」では、これまでの作品を発展させた二つの作品にフォーカスしています。「瀕死の彫刻(裸婦像)」は、ライフサイズに拡大したポルノ雑誌に載っている裸の女性のイメージを、紙のように薄いスチールパネルに貼り付け、くしゃくしゃに丸めた彫刻作品です。魅惑的なはずの女性の姿は暴力的に歪められ、本来はセクシュアルであるはずのイメージがその役割を失って佇む様子は、しかし物体そのものの魅力をより感じさせます。そこにはまた、スケールや素材の特性の歪曲という点と、クラシカルな裸体像への興味深いアプローチがあり、彫刻の本質を反映していると言えます。

「瀕死の彫刻(バケツ)」は、サイズの違う4つの青いプラスチックのバケツを同じ形になるように、ダメージを与えた作品です。ここでは前回の自動車事故の局部を再現した作品とは違って、元々比率の違うサイズを用意していることから、同じ形にすることが不可能であることが分かります。それを手作業で無理矢理同一化させようとする試みが、実際に同じ形に歪んだ4つのバケツを通して、作家の彫刻的錬金術への執着がよみとれます。

「瀕死の彫刻(紙袋)」では、ねじれた紙袋が元に戻ろうとする際に見せるかすかな動きに注目しています。ほうっておけばいずれは止まってしまうその動きを、ここでは断続的に動き続けるよう展示しています。

※全文提供: Take Ninagawa


会期: 2010年6月26日(土)-2010年7月31日(火)

最終更新 2010年 6月 26日
 

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