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束芋:断面の世代
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 6月 22日

束芋《BLOW》(イメージ)2009年、映像インスタレーション
Courtesy the Artist and Gallery Koyanagi ※無断転載禁止

1975 年兵庫県に生まれた束芋は、京都造形芸術大学芸術学部情報デザイン学科に学び、卒業制作として発表した映像インスタレーション作品《にっぽんの台所》(1999 年)で一躍注目を集めました。アニメーションを用いた作品で束芋がテーマとしたのは、集合住宅である団地を舞台に主婦の周辺におこる日常であり、それも現代日本社会が抱える病巣のような問題に冷静な視線を送り、強烈な「毒」を込めながら作品化しました。何百枚、何千枚と自ら描くアニメーションは、手書きの原画をコンピューターに取り込みながらもペンや墨による輪郭線に北斎版画の色調を援用することで、どこか懐かしささえ漂う独特の画像を作りだしています。

その後も横浜トリエンナーレやサンパウロ・ビエンナーレ、ヴェネチア・ビエンナーレなどへの国際展の出品やパリのカルティエ現代美術財団、東京の原美術館、そしてロンドンのパラソル・ユニットでの個展など、ますます活動の幅を広げるとともに、生み出される作品も「にっぽんの」と冠された束芋が属する現代日本社会の諸相を表現するものから、自分自身と外部の関係性を見つめつつ大型インスタレーション化がはかられる作品へと変化しています。

今回の個展タイトルでもある「断面の世代」とは、「団塊の世代」に対比させて、束芋自身が自らの世代を呼称するために創案した言葉です。束芋は70 年代生まれの世代は個を尊重する存在であり、その個を断面として捉えた時に二次元の断面を集積していくことで出来上がる三次元世界により新たな世界が見えてくるのではないか、と考えています。その視線は、初期の作品で見せた外から内へ、社会から個へという行方から、内そして個から外へと往還させながら展開しているといえるでしょう。

関西では7年ぶりとなる今回の個展のために制作された新作 5 点を通じて渾身の束芋ワールドを堪能していただけることでしょう。

束芋プロフィール
1975 年兵庫県生まれ。現在長野県在住。1999 年京都造形芸術大学卒業。1999 年、大学の卒業制作として制作した映像インスタレーション《にっぽんの台所》がキリン・コンテンポラリー・アワード1999最優秀作品賞受賞。主な個展に2003 年東京オペラシティ・アートギャラリー、2006 年原美術館(東京)、カルティエ現代美術館(パリ)、2010 年シンガポール・タイラー・プリント・インスティテュート、パラソル・ユニット(ロンドン)。2001 年横浜トリエンナーレ、2002 年サンパウロ・ビエンナーレ、2006 年シドニー・ビエンナーレ、2007 年ヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア館)など国際展やグループ展への参加多数。また随筆や本の装丁、新聞小説の挿絵も手がけるなど、さまざまなジャンルでその才能を発揮している。

※全文提供: 国立国際美術館


会期: 2010年7月10日-2010年9月12日

最終更新 2010年 7月 10日
 

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