金沢健一:鉄のエロス |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 5月 06日 |
鉄を熔断して作る「音のかけら」や、鉄の立体作品で知られる金沢健一の彫刻作品と映像作品をご紹介します。これは、鉄に熱をかけていく時に生じる、風景です。いつもは、作っている作家自身も見られない有機的な鉄のエロスの世界が広がっています。この映像は作家と鉄とのいわば一対一の会話でもあるのですが、みるものにとってそこには、それが何かという具体的な意味よりも、原初の地球ができあがっていく時の蠢きのようにも見える、不思議な世界がひろがります。 金沢健一 KANAZAWA Kenichi 個展 (2000年以降の主な活動): グループ展歴多数。 コレクション: ※全文提供: Contemporary Art and Spirits(CAS) 会期: 2010年5月8日-2010年6月12日 |
最終更新 2010年 5月 08日 |
鉄による彫刻作品『層』シリーズと映像作品『鉄と熱の風景』(2005-2010)による金沢健一の個展。鉄に熱をかけていく時に生じる風景を撮影した映像作品からは鉄の持つ可塑性が感じられるのに対して、床に置かれた鉄の彫刻作品『層-接点/ノイズ』(2010)からは、金属の滑らかな光沢が無機質な印象を与える。金沢は鉄という素材の多様な性質を映像と彫刻を同時に展示することで、異なる鉄の位相を提示する。
この『層』シリーズは複数枚の同サイズの鉄板とそれを分割した鉄板を組み合わせ、20~30cmほどの小ぶりな建築的構造体に組み立てられている。組み合わされるパーツの変動によって、見る角度によりさまざまなスリット、径路、空間を有し、規則性と変則性のバリエーションがシリーズに広がりをもたらしている。
それは彫刻家・毛利武士郎(1923-2004)による鉄の直方体表面に溝や線、円、スリットが刻まれた『彼の/地球への/置手紙 その1』(1998)を想起させもする。モノリスのように謎めいた鉄の直方形の佇まいは、鉄の表面を通して見えない層へと視線を誘う。