奇景 |
アートワーク |
執筆: 小金沢 智 |
公開日: 2009年 8月 31日 |
2003年から制作が始められ、今も継続して制作されている三瀬のライフワークといっても過言ではない屏風状の作品。作品向かって左端から作られ、右端に新作が接ぎ木されていくというフォーマットが採用されており、2006年1月の「MOTアニュアル2006 No Border 「日本画」から/「日本画」へ」(東京都現代美術館)の際は十九曲一隻だったが、2009年1月の「三瀬夏之介展 冬の夏」(佐藤美術館)時点では三十四曲一隻に膨れ上がり、全長30メートルものスケールとなった。 もっともサイズだけに注目すべきではない。重要なことは、同作からその時々の三瀬の関心を窺い知ることができるということだ。「三瀬夏之介展 冬の夏」のレビューで既に言及したためここでは詳述しないが、初期段階では描写というよりは画面への積極的な錆の採用や印刷物のコラージュ、書き文字などが目立ち、翻って右端を見ればほとんど墨だけを用いたシンプルな仕事になっている。それはそのまま、錆から箔へ、箔から墨へという三瀬の関心の軌跡に重なるものだ。膨大な情報が詰め込まれているように見えながら、繰り返し描かれているモチーフが多いことも指摘したとおりである。場所が限られるものの、定期的な発表が期待される。 作品詳細アーティスト: 三瀬夏之介 |
最終更新 2015年 11月 01日 |