umechan |
アートワーク |
執筆: 小金沢 智 |
公開日: 2009年 2月 12日 |
ギャラリーに作られた水盤に、20本以上の梅の切り枝が活けられている。《Botanical Sculpture #1 Assemblage》(2008年2月)で用いられた結束バンドがここでも使われているが、基本的にはそれぞれの枝がお互いを支え合う形。水は乳白色に色付けされ床の色と近くなっているから、梅の茶褐色の枝の色と、赤紫の花の色が展示室に浮かび上がる。エアコンによって暖められた空間が梅の開花を促進し、一足早い春の訪れを鑑賞者に予感させた。 《umechan》という今回のタイトルが、イラストレーター・林静一がLOTTEののど飴、「小梅」のパッケージに描いた少女「小梅ちゃん」によることは明らかだろう。だからなんと、展示室入ってすぐの床面には大量の「小梅」がバラまかれている。赤いパッケージの飴の集合は円形となりさながら日の丸を想起させるが、それに深い意味が籠められているのかどうかは判断し難い。なんにせよ、鑑賞者ができることはその中から一つを手に取り、袋を破ってそれを舐め、口の中一杯に梅の味を感じながら花を眺めるだけだからである。期間の短い、かつ旧暦の立春をまたぐ時期だからこその作品だが、最終日、咲きはじめのものと枯れつつあるものが混在する様は、初日のどれもが咲きつつある状態よりもいっそう甘美に私には感じられた。 作品詳細アーティスト: 東信 |
最終更新 2015年 11月 01日 |