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Time Lapse Plant /偽加速器( prototype/試作)
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 12月 23日

画像提供:BankART 1929

私たちは、時間を知覚する器官を持っていない。光や音は、眼や耳の器官で感知され、それぞれいくつもの情報として脳に送られて、脳内のさまざまな部位で処理されたのち統合される。形態や色彩、そして運動は視覚に束ねられ、空気の振動は様々なざわめきとして聞こえる。その他にも、空気中に拡散する微細な粒子は、鼻の粘膜を介して匂いとして捕らえられ、温度や振動もそれぞれセンシングされる。しかし、時間そのものを感知する事はできない。だが、時間に様々なレイヤーがあるという事は、確かな事のように思われる。例えば身近な植物の生きている動きすら、ヒトの時間では見る事が出来ない。コマ落とし(Time Lapse photography)という、あっけないくらい簡単な技法を使うと、植物の生きている時間が見えてくる。それは、たぶん誰もが一度は目にした映像だろう。 現在、地球の大半を被っている世界時間のネットワークは、「協定世界時」と呼ばれ、1972年からは、「セシウム133原子が、91億9263 万1770 回振動する時間を1 秒とする」と、計量に関する国際単位系(S1)によって定められている。そのセシウムの振動が、91億9263 万1771 回ではなくきっちり91億9263 万1770 回だと測定する機器に関しては、私の想像力は遠く及ばないが、この1 秒を決して私の身体は正確に感知しえないだろう事は、容易に想像できる。 「Time Lapse Plant /偽加速器」は、LED照明や音を使い、観察者の影に運動を与える事で、見る者の時間感覚を困惑させる。同時に、色彩を感知する人の目のシステムや音と光の同期により、偽のリアリティを現出させる装置です。

参照: 一川 誠「 大人の時間はなぜ短いのか」(集英社新書)
*この作品は、東京都写真美術館で開催される第2 回恵比寿映像祭出品作の試作機として、BankART1929と東京都写真美術館の協力を得て制作されます。

藤本隆行
1987 年、ダムタイプに参加。『S/N』以降の作品では、照明並びにテクニカル・マネージメントを担当する。また、池田亮司のコンサートや海外のアーティストの舞台作品にも、照明デザインを軸に参加。近年は、デジタル・ディバイスの同期にフォーカスを当てた、LED照明デザインを特徴とする有機的な舞台を構築している。

真鍋大度
1976 年 東京生まれ。東京理科大学理学部数学科、国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)卒業。プログラマー、アーティスト、サウンドデザイナー、DJ、VJ。世界各国のデザイン、アートプロジェクトにプログラミングとサウンドデザインを駆使して参加。2006年 株式会社ライゾマティクス設立、2008年4nchor5 la6を設立、石橋素と共同主宰。2009年Ars Electronica Center Opening Performance、Ars Electronica デジタルミュージック部門審査員、Ars Electronica Festival Opening Performance、ISEA選考委員、文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門優秀賞受賞。

石橋素
東京工業大学制御システム工学科、国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)卒業。在学中、当時発売されたばかりの加速度センサーADXL202を使い、画面を傾けて遊ぶ『G-Display』を纐纈大輝と発表。その後は、主にデバイス、プログラミングを駆使した作品制作、アートプロジェクトに参加している。2006年(株)DGN設立、2008年4nchor5 la6を設立、真鍋大度と共同主宰。2007年「TRUE -本当のこと-」機構制作、2009年「Pa++ern」。

関連イベント情報
オープニングパーティ+ 安藤洋子×平井優子 ダンス・インプロビゼーション
日時=2009年12月25日[金] 20:30–22:45 (ダンスイベント=21:30–21:50)
料金=1,500 円(パーティ参加費含む) 協力=象の鼻テラス

安藤洋子(あんどう ようこ)
1989年木佐貫邦子に出会い、本格的にダンスを始める。山崎広太、笠井叡等多くのダンス公演に参加。97年より自作自演のソロダンス活動を開始。その傍ら、野田秀樹作・演出: NODA.MAP公演、小澤征爾指揮によるロベルト・ルパージュ演出のオペラ、坂本龍一オペラなど幅広く舞台で活躍。2001年ウィリアム・フォーサイスに認められフランクフルトバレエ団(05 年よりThe Forsythe Company)に入団。ザ・フォーサイス・カンパニーの中心的存在として世界の第一線で活躍するとともに、日本においても、自らの企画プロジェクトや外部カンパニーへの振付けなど、精力的に活動している。

平井優子(ひらい ゆうこ)
幼少よりクラシックバレエを学ぶ。珍しいキノコ舞踊団、ニブロール、ルーデンス作品にダンサーとして客演。2001 年よりダムタイプメンバーとして活動する傍ら仏振付家Marco Berrettini、映像作家Sharon Lockhart 等とのクリエーションに参加。地元岡山にてミュージシャンとの即興コラボレーションや振付作品の発表等もおこなう。2008年ダムタイプ高谷史朗新作「明るい部屋」のクリエーションに参加、ツアー中。

対談=藤本隆行×山口真美(中央大学文学部心理学研究室教授)
日時=2010年1月10日[日] 15:00–/料金=1,000 円(ワンドリンク付き)

山口真美(やまぐち まさみ)
1987年、中央大学文学部卒業。お茶の水女子大学大学院人間発達学専攻単位取得退学。博士(人文科学)。(株)ATR人間情報通信研究所客員研究員、福島大学生涯学習教育研究センター助教授を経て、現在中央 大学文学部心理学研究室教授。主に生後8か月までの赤ちゃんを対象に、脳と心の発達について研究している。著書に『赤ちゃんは顔をよむ̶視覚と心の発達学』(紀伊國屋書店)、『赤ちゃんは世界をどう見ているのか』(平凡社新書)、『視覚世界の謎に迫る̶脳と視覚の実験心理学』(講談社ブルーバックス)など多数。

※全文提供: BankART 1929

最終更新 2009年 12月 25日
 

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