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臼井良平:encounter
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2009年 11月 18日

画像提供:無人島プロダクション

臼井はこれまで、私たちの身近にあるものを主役に、ゼロから新しい何かをつくり出すというよりは、すでに存在するものの「見方」を変える、現代版「見立て」ともいえる作品を発表してきました。

前回の個展「Flying goza mat」では、空中をひらりと翻るござが写された、日本版アラビアンナイトともいえる写真作品「空飛ぶござ」や、日本最大の無人島を、手のひらほどのサイズに縮小し毛糸で形作った「人のいない島」、モノクロで撮影された巨大な石の写真の背後に光源を置き、壊れた看板のようにみせた作品「Gray Sign」を発表しました。一見するとどこかで見たことのあるような、既視感を感じさせる身近な場面や物が、臼井のユーモラスな着想や意図によって、これまで見ていたものとは違うものへと、「見え方」が変わる瞬間を独特の視点で提示しました。

今回の個展「encounter」では、複数のシリーズ作品を発表いたします。タイトルの「encounter(遭遇)」とは、「思いがけず、偶然的に何かと出会うこと」を意味しますが、今回臼井は「ふだん何気なく目に映っていただけのものを、はじめて"存在"として認識する」という意味で「encounter(遭遇)」と名付けました。思わず見過ごしてしまいそうな物や事象も、気持ちのありようによって見え方が変わるし変えることができる、ということを、臼井の多様な表現手法によって具現化します。

また今回臼井は久しぶりに(無人島でははじめてとなります)、ペインティングによる連作「遭遇」を発表します。臼井のペインティングは2003年に発表した「おでんとう」(参照)以降長らく発表されることがありませんでしたが、今回実に6年ぶりとなるペインティング作品を発表します。この「遭遇」では、不意に目の前に現れた動物などが、亡くした誰かに見えてくるという自身のエピソードをもとに、風景の中に生き物が存在する光景が描かれています。その他にも、街中に放置されている「瓶」や「ペットボトル」などを撮影した写真シリーズ「Forgotten liquid」や、昨年発表した鏡にサンドブラストを施した「結露」シリーズをさらに発展させた新作も発表いたします。

無人島プロダクション2009年を締めくくる臼井の本新作展をぜひご覧いただきたく、どうぞよろしくお願いいたします。

※全文提供: 無人島プロダクション

最終更新 2009年 11月 20日
 

編集部ノート    執筆:平田剛志


日々とは何気ないものとの遭遇(encounter)である。臼井良平の作品を見るとそんな「遭遇」の驚きと謎に満ち溢れている。それは「発見」というには無意味で、「出会い」というほどドラマティックでもない。何度も通っている道なのに、何度も見ている窓なのに、普段であれば気がつかない存在や現象に気づいてしまったときの気づきの瞬間が伝導するような作品なのである。 そう、「遭遇」には「遭遇」したと気づく必要がある。6年ぶりに発表されるペインティング作品『遭遇』は謎めいた世界を開示しながら、「遭遇」の瞬間や空気を刻印しているだろう。それが「遭遇」と気づくかは別として。


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