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フランク・ゲアリッツ:レザーブレイド・スーツケース
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2014年 9月 25日

フランク・ゲアリッツ Frank Gerritz
レザーブレイド・スーツケース Razorblade Suitcase
2014
ペイントスティック・アルミニウム Paintstick on anodized aluminum
各 60 x 60 cm (4点組) 4 part, each 60 x 60 cm

タグチファインアートでは、フランク・ゲアリッツ作品の展示を、上記の期間約5週間にわたり行います。

フランク・ゲアリッツは1964年ハンブルク近郊、バート・オルデスロー生まれ。現在ハンブルクを拠点に、ヨーロッパとアメリカで定期的に作品を発表しています。その作品はヴェサーブルク美術館(ブレーメン)、ハーグ市立美術館、ポントワーズ美術館、パンザ・コレクション(ヴァレーゼ)、ナショナル・ギャラリー(ワシントンDC)、ブルックリン美術館(ニューヨーク)、メニル・コレクション(ヒューストン)等、多くの美術館、個人コレクションに収蔵されています。

ゲアリッツが、抽象的・幾何学的な言語によって作品を制作している今日の作家のなかで、最も重要な作家のひとりであることは疑いありません。一見しただけでは、彼の作品はミニマリズムやコンセプチュアルアートの道を遡るものに見えるかもしれませんが、そうした見方はあまりにも一面的です。ゲアリッツの作品においては個々人の知覚の生き生きとした部分に関わる性質が重要であるからです。彼の作品は表面的な見かけよりも実に深淵であり、美術史の議論に対しても常に多様な引用と見解との複雑な織を提供しています。

彫刻家として出発

ゲアリッツは彫刻家としてそのキャリアを開始していますが、長い期間にわたり、自らの彫刻的な思考を、主にドローングという形式において発展させてきました。それはドローイングでありながらもレリーフ的な性格を強く備え、彫刻同様、周囲の空間にエネルギーを強く発散させます。彼はこれまでに、初期の彫刻インスタレーションをもとに、二つの主要なシリーズ作品を生み出しました。一つはMDFパネルに描く鉛筆のドローイングであり、もう一つはアノダイズ処理されたアルミ板の上にペイントスティックで描くドローイングです。

鉛筆によるMDFのドローイング

ファベール社のカステル9Bという鉛筆で、ゲアリッツは工業的に生産されたMDFパネルの平滑な表面の上に、小さなストロークのハッチングによって黒鉛の層を何層も重ねていきます。垂直と水平という異なった方向に素描することによって、網の目が描かれ、作品の基本構造となります。この幾何学的構造の正確さが、黒鉛という素材がもつ効果によって、知覚のまったく異なるレベルに変換されます。表面に積み重ねられた黒鉛は、私たちがまったく予期せぬ様相で光を捉えます。本来は暗闇であるはずの黒い平面が部分的に鏡のように光を反射し、鑑賞者自身の姿や周囲を映し出します。私たち鑑賞者の眼差しは、作品表面で、光に満ちた世界を旅することになるのです。

ペイントスティックによるアルミのドローイング

もう一方のシリーズで、ゲアリッツは自らの指示通り慎重に製作され、アノダイズ処理されたアルミ板の上に、黒いペイントスティックをぶ厚く(約 5 mm)塗り重ねていきます。実際の作品を正面から見たとき、私たちは表面の透徹した黒色の美と、塗り残された部分のアルミ素材の工業的な美、また作品の厳正な精度に魅了されます。そしてMDFのドローイング同様、光を孕んだり反射したり、私たちが生きている実際の空間と複雑に反響するのを体験することができます。

紙のドローイングと壁のドローイング、オークション/案内状

これら二つの言うなれば「壁の彫刻」とは別に、ゲアリッツのこれまでの20年間の仕事には、紙に鉛筆で描くドローイングのシリーズ、印刷物の上にペイントスティックを塗る(案内状とオークション)シリーズ、そして壁に直接鉛筆でドローイングする、モニュメンタルなウォール・ドローイングがあります。どの作品も総て等しく、限られた幾何学的な語彙によって構築されています。

レザーブレイド・スーツケース

日本で、またアジアで初めての展示となる今回の個展は、アルミの上にペイントスティックを重ねた作品のみ、5点の作品で展示構成いたします。4点組の新作の題名「レザープレイド・スーツケース」が本展示のタイトルとなっています。

ゲアリッツの作品は大変な集中力を要し、制作にとても長い時間がかかるため、彼の作品のコレクターは常に、新作の発表を心待ちにしています。今春のケルンでのアートフェアでタグチファインアートは彼のMDFドローイングを展示し、大変な好評を得ました。アジアで初めてのフランク・ゲアリッツの個展をぜひご高覧ください。

なお、初日10月11日(土)18時より20時まで、この機に来日する作家を囲み、ささやかなレセプションを行います。お誘い合わせのうえぜひお運び下さい。


全文提供:タグチファインアート
会期:2014年10月11日(土)~2014年11月15日(土)
時間:13:00 - 19:00
休日:日・月曜、祝日
会場:タグチファインアート
最終更新 2014年 10月 11日
 

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