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Gallery PARC Art Competition 2014 #03  A Sense of Mapping ‒私の世界の測り方‒
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2014年 6月 23日

松本絢子  点景̶6days(部分)
墨、鉛筆、新鳥の子紙  2012
310×230mm

Gallery PARC Art Competition 2014
全体会期 2014年07月01日[火] ─ 08月10日[日] *2週単位で3本連続開催

本展は様々なクリエイション活動へのサポートの一環として、広く展覧会企画を公募し、審査により採択された3名(組)のプランを実施するコンペティション「Gallery PARC Art Competition 2014」によるもので、2013年12月から2014年1月にかけて応募された44のプランから、審査員・平田剛志(京都国立近代美術館研究補佐員)、山本麻友美(京都芸術センタープログラムディレクター)の2名を交えた厳正な審査を経て採用となった薬師川千晴、むらたちひろ、松本絢子・山城優摩・森川穣の3名(組)による展覧会を実施するものです。


【選考にあたっての審査員講評】

本公募企画は、今年から始まった展覧会プランを公募する新しいコンペティションである。だが、応募プランが「新しい」必要はなく、ましてや京都の土地柄を踏まえて「伝統」的である必要もない。今回選出された3名(組)のプランに共通する点があるとすれば、現象やアートの「新しさ」や「伝統」を問い直し、自身の世界(観)を固有の言葉や論理によって生みだそうとしていた点であった。
ASM実行委員会(企画:森川穣)のプランは、現代社会における地図感覚を美術作品に適用し、地図と美術の関係性を考察する企画内容が秀逸だった。また、プランにおいて明確に観客(他者)の存在が意識されていた点は特筆される。
薬師川千晴の「絵画碑」は、堂々と「絵画」をタイトルに掲げ、絵画史へと対峙する意志を感じた。会場で弓を射るという儀式めいた行為には不透明さが残るが、神話的な絵画の存在感に賭けてみたい。
むらたちひろは、ギャラリーのガラス窓と小上がりを用いて、染織表現の特徴を生かした展示プランに現実性があった。タイトルは内省的すぎるが、染織と絵画のボーダーを問う考察・実践の深化を期待したい。
平田剛志(京都国立近代美術館研究補佐員)


全体的に心惹かれる文章や作品も多く刺激を受けた。
ただ、資料を見ていて気になったのは、作品の完成度は高いが既視感のあるタイプが思った以上に多かったこと。自分の表現に似ている作品について、「知っている」ことは思った以上に重要であると思う。ただしこれは、鑑賞者側にも同じように知識がなければ意味をなさないことであると同時に、過度のオリジナリティ礼賛と歴史を学ぶ機会が少ない美術教育のあり方に問題があるとも言える。
更にもうひとつ、日常やありのままの姿をポジティブにとらえようとすることは、創作のモチベーションとしては希薄であり、それが作品の印象に直結していること。これは「共感は生むけれど感動はない」という現代美術の病かもしれない。
今回選んだ3つのプランはそこから抜け出してくるものであると期待している。

山本麻友美(京都芸術センタープログラム・ディレクター)


【関連トークイベント】===================
「地図感覚のこと」
8月10日[日]16:00〜 予約不要・参加無料
出演:平田 剛志(京都国立近代美術館研究補佐員)×森川 穣(本展企画)×松本 絢子(本展出品作家)×山城 優摩(本展出品作家)


#03 A Sense of Mapping ‒私の世界の測り方‒
松本絢子・山城優摩 企画:森川穣

内容:作家:松本絢子・山城優摩、キュレーション:森川穣による「地図」と「絵画」を巡る二人展。
個性的な視点・手法により絵画制作を続ける若手作家の作品から、新たな風景・新たな視点を体験するとともに、「見る地図:読む絵画」といった絵画と地図にある関係性にも言及する。    
会期中にはゲストを招いたトークイベントを開催。

[作家コメント]
誰しも独自の地図感覚というものがある。目的地に辿り着くまでに何を目印にしているかは三者三様で、その目印を継ぎ接ぎしながら目的地まで辿り着く。松本絢子と山城優摩の作品は、その地図感覚の楽しさを改めて思い出させてくれる。それは具体的な場所ではないのかもしれない。しかし知らない土地を方向もわからないまま歩く時のワクワクを感じることができる。二人の作品を通じて、継ぎ接ぎの地図を観客それぞれが紡いで欲しいと思う。
森川 穣(ASM実行委員会代表)


風景を見た記憶は想像以上に曖昧で、時が経てば薄れていく。写真や映像は風景の詳細を記録できるが、それはあくまで風景の構造であり、その時の私の意識までは写してくれない。
風景を描くことには、写真や映像のような記録性も、地図のような正確さもない。しかし、描く行為は、私がその風景に対峙した時の思いを、やり取りの中からすくい上げてくれるかのようである。空気の厚みや温度、風、音、物の量感や距離感など、その場でしか感じ得ない「感触」を確かめるように、画面に触れていく。
そのように描かれたものを見る事は、また新たな体感を伴っていく。そして、その感触が新たな記憶としてそれぞれの風景になれば、と思う。
松本絢子


作品を構想する時、私は身近な土地を徒歩や自転車で巡りながら思考する。
そうしていると普段生活する上では気にも留めない退屈な景色に不意に心引かれる瞬間がある。
鬱蒼とした茂み、僅かにずれて並ぶ杭や開けた解体跡地、都市の中で別段みる物のないとする景色で様々な要因が積層し思わぬ変形を遂げた豊かな場として表れる。
絵画の地の上で時には地図を読む様に捉え図形であり空間でもある形や色彩を探る。
その集積によってあの名前のない豊かさを湛えた土地の様に固有の場を画面上に描き出したい。
山城優摩

[作家プロフィール]
森川穣 Minoru Morikawa (企画者)
1983 大阪生まれ
2006 京都精華大学芸術学部造形学科洋画専攻卒業
2007 Chelsea College of Art and Design Po stgraduate
Diploma Fine Art 卒業
現在 大阪を拠点に活動中
2013 「Common Sense of the East」(Gallery175/ソウル、韓国)
2013 二人展 NO x 森川穣「ROOTS」(VADE MECVM./大阪、日本)
2013 「IPP#1」 (ロシア現代史博物館/モスクワ、ロシア)
2012 「うたかた」 (アートラボあいち/愛知、日本)
2012 「うつせみ」 (常懐荘/愛知、日本)
2012 「IPP#0『風景の逆照射』」(ギャラリーフロール/京都、日本)
2011 「第24回UBEビエンナーレ」 (ときわ公園/山口、日本)
2011 二人展 柏原えつとむ¦森川穣「Silencer¦天地」(studio90/京都、日本)
2010 「BIWAKOビエンナーレ2010」 (近江八幡/滋賀、日本)
2010 個展 「雨の降るを待て」 (studio90/京都、日本)
2010 個展 「確かなこと」 (京都芸術センター/京都、日本)
2008 個展「 彼の地」 (studio90/京都、日本)


松本絢子 Ayako Matsumoto (出品者)
1985 大阪府生まれ
2007 京都精華大学芸術学部 造形学科洋画コース卒業
2009 京都精華大学大学院芸術研究科芸術コース卒業
2006 風景のツクリカタ-再解釈の方途-(ギャラリーフロール / 京都)
2008 個展 超える先の空白(galerie16 / 京都)
2008 個展 The blight lines(京都精華大学7-23gallery / 京都)
2009 個展 composed blank(AD&D gallery / 大阪)
2012 冬の引き出し(Port Gallery T / 大阪)


山城優摩 Yuma Yamashiro(出品者)
1987年 大阪府生まれ
2011年 京都精華大学芸術学部 造形学科洋画コース卒業
2009 PM12 connect ロンドンー京都学生共同制作展(京都精華大学 / 京都)
2010 Wave in Space(cubic-gallery / 大阪)
2010 ART AND CRITIQUE 2010 -extension-(成安造形大学 / 滋賀)
2010 10×10 vector(京都精華大学 / 京都)
2011 京都精華大学卒業修了制作展(京都市美術館 / 京都)
2012 視域 ― A field of vision ―(京都精華大学 / 京都)
2012 懐(常懐荘 / 愛知)
2012 岸本沙央梨 × 山城優摩  Influence -差響する「」- (ギャラリーフロール /
京都)
2013 科学のあとに詩をかくこと(京都精華大学、galerie 16 / 京都)
2013 てん (gallery ARTISLONG / 京都)
2014 HUB-IBARAKI ART COMPETITION(茨木市クリエイトセンター / 大阪)

松本絢子
山城優摩
森川穣

全文提供:Gallery PARC
会期:2014年7月29日(火)~2014年8月10日(日)
時間:11:00 - 19:00 金曜日20:00まで・最終日18:00まで
休日:月
会場:Gallery PARC
最終更新 2014年 7月 29日
 

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