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梅津庸一:智・感・情・A
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2014年 4月 01日

梅津庸一
「智・感・情・A」(部分)
2014年
パネル、油彩
四点組
各180.6×99.8cm

梅津庸一( 1 9 8 2 年山形県生まれ)は東京造形大学絵画科卒業後、第9 回岡本太郎記念現代芸術大賞 展( 2 0 0 6 年)にて準大賞を受賞し、近年では「絵画説明会」( 2 0 1 1 年、スプラウトキュレーション) 、「で あ、しゅとぅるむ」( 2 0 1 3 年、名古屋市民ギャラリー矢田) といった絵画の制度的問題や受験教育の痕 跡を辿る実験的な展覧会にも参加しています。5 年ぶりの個展となる本展では、タイトル にもある《智・感・情》を基軸に美術史への複数の点からの接続を試みます。
これまで梅津は、取り組んできた“ 自画像”というテーマのなかで、身の回りのことや、 日本の近代絵画に影響を与えたラファエル・コラン( 1 8 5 0 - 1 9 1 6 ) の「フロレアル」をはじめ、 彼に師事し日本の美術教育の礎を築いた黒田清輝( 1 8 6 6 - 1 9 2 4 ) らの作品を引用してきまし た。無数の光の粒で構成されるかのような独自の色彩と筆致を用いて、露わになった作家 自らのすがたを、理想化することなくありのまま描き出す行為からは、身体的特徴すらも 作品として定着させようとする姿勢が見受けられます。
先に述べた《智・感・情》といえば、黒田清輝が1 8 9 9 年に発表した裸体画です。数々の 研究がなされてもなお、作者本人による言及がないために謎が多く、それゆえ人々を惹き つけ続けます。日本人画家による初めての日本女性の裸体画、という事実の鮮烈さが先行 しがちですが、平滑な金地の背景、西洋美術に基づき理想化された女性の身体などを用い、 日本を含むアジア/ 東洋の美術を世界的な美術史に対して示し、具体的な思想との関係性 を女性のポーズやタイトルに内包する東洋の自画像として表現しているかのようです。  また《智・感・情》に触れるうえで、村上隆が2 0 1 0 年に制作した《黒田清輝へのオマー ジュ「智・感・情」》の存在を避けることはできません。黒田と同じ金地の背景に描かれた のは、イラストレーターによるアニメ風の女の子でした。そこでは、黒田とは異なる身体の 理想化が現代に即した形で図られ、また性への追求も鋭く行われています。現代美術の シーンにおいて、世界的な活躍をみせる村上が、西洋の教えを取り入れるだけでなく東洋の 姿を強く表した黒田の作品をリメイクすることは、必然的だったと言えるかもしれません。

黒田の後を生きるわたしたちが少なからず影響を受け、思想的にもまた作品として も継がれゆく《智・感・情》、梅津はそのひとりとしてただ道をなぞるのではなく、 素地にある日本の美術史をはじめ、東洋・西洋美術史との関係性、そして梅津をとり まく日々の生活や美術の現状、これらすべてを等しく接続していきます。無数の矢印 が行き交うことで生まれたこの関係図は、そのまま立ち上がるかのようにギャラリー 空間に姿を現します。

また、会期中には、過激なハプニングで「裸体」を美術に持ち込んだゼロ次元を念 頭においたパフォーマンスやトークショーも行われます。絵画における裸体画の歴史 だけでなく自らの身体を使ったパフォーマンスによって文字通り、コラン‐黒田清輝‐ ゼロ次元と日本における「裸の系譜」とこれからを提示します。 絵画として、あるいは梅津自身が両義での自立/自律をみせる展示空間で《智・感・ 情》、そして《A》とは何であるのか、ぜひご高覧下さい。

< トークイベント>
4 月26 日( 土) 18:00 - 20:00
荒木慎也(美術教育研究)× 梅津庸一( 美術家)
「日本の美術教育史の再考」
5 月10 日( 土) 17:00 - 19:00
永田 希(書評家、@nnnnnnnnnnn) × だつお(アーティスト、@datsuo) × 筒井宏樹(編集者、美術理論)
× 梅津庸一( 美術家)
「ときめき☆びじゅっこ会談」

5 月24 日( 土) 17:00 - 19:00
新藤 淳( 国立西洋美術館研究員)× 梅津庸一( 美術家)
「東洋と西洋の間に‐ 智・感・情の謎をめぐって‐ 」


全文提供:ARATANIURANO
会期:2014年4月19日(金)~2014年5月24日(日)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月曜、祝日
会場:ARATANIURANO
最終更新 2014年 4月 19日
 

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