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石塚隆則:霊獣
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 8月 11日

画像提供:nca

山口裕美プレゼンツ;石塚隆則「霊獣」展を開催いたします。 多方面で活躍中のアートプロデューサー山口裕美氏が最も注目する若手日本人作家、石塚隆則はこれまで主に平面作品を発表してきましたが、今展覧会では数年前から精力的に取り組んできた立体作品を初めて発表します。可愛さと不気味さが同居する木彫作品は鑑賞者に鮮烈な印象を与えます。ncaで初となる彫刻作品の展覧会、15cmの小品から2mを超す大作まで大小様々な木彫作品と、ペインティングによって構成されます。

「霊獣」展によせて
かつて日本は森だらけであった。私達の祖先にとっての森は、神聖であり、かけがえのない場所だったのだ。森には宮崎駿の描く豊穣な里山や小説「月山」のような厳格な山、さらには中上健次や折口信夫の描く日本の魂の原点的イメージもある。人智を超えた奥深い神聖な魅力を持ち、命のスープをたぎらせる場所。私が住んだフランクフルトの北側には鬱蒼とした森のタウナス山があり、散歩に行くことを意味するSpazieren gehenは、哲学的思考をするニュアンスを含んでいた。けれども、現在の東京では、散歩は街歩きのことだし、思索に耽ること自体が失われつつある。魑魅魍魎が徘徊する森が懐かしい。

石塚隆則は画家として知り合った。ところが、このところずっと木彫に集中していて、スタジオを訪問して言葉を失った。奇妙な動物達が肩を寄せ合うように立ち往生していたからだ。彼らは間違いなく「森」からやってきていた。生々しく生命力の強そうな、不気味で狡猾な、愛らしい生き物達。本能のままに生き、喰らい、孕み、生み、死んでいく動物達は石塚隆則の手で、命を点けられた。久しぶりの泥臭い木彫の登場はncaをひとときだけ「森の出張所」にするだろう。
- 山口 裕美(アートプロデューサー / アートジャーナリスト)

全文提供: nca | 日動コンテンポラリーアート

最終更新 2009年 9月 04日
 

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