2000年代の福井が描くテーマは身近な生活を描写するのが特徴です。2002年小山登美夫ギャラリーで行った個展「bedroom patintings」で展示された1点『yellow face』では、床で横になる時に目に映る緑のTシャツを着た自分の胴体と天井の電球は、山並みと太陽のような風景に変貌し、都会の狭小な暮らしのスペースを、シンプルな構図と輪郭で軽妙に隠喩しました。その後、福井は自らの独創的な物語に基づき、より隠喩的かつ哲学的な展開を見せます。2006年の個展「the eyes of the midnight sun」では、福井が想像する地球が絵画によって語られました。2009年の個展「I see in You」では、暗い青色の場面が多くなり、内にこもっている感情や自然そのものに宿った不安が伝わるようです。
また、本展のタイトルである「Summer into Winter」は、ベン・ワット(Ben Watt)のアルバムタイトルから引用したものです。このタイトルは、福井のタイムラインにおける季節の移り変わりの描写であるとともに、熱帯に位置する当ギャラリースペースで間もなく発生する、作品による視覚的な季節の変化をも示します。
[作家プロフィール] 福井篤は1966年、愛知県生まれ。1989年に東京芸術大学美術学部油画科卒業。現在、山梨県を拠点に制作活動を行っています。 福井は2001年、奈良美智キュレーションによるグループ展「morning glory」に出展した後、小山登美夫ギャラリーでの個展は、2002年の「bedroom paintings」、2004年の「teenage ghosts (and other scary stories)」、2006年の「the eyes of the midnight sun」、2009年の「I see in You」、2011年の「Uncommon Deities-Prints」があります。その他の主なグループ展に、「ORANGE SKY」(2011年、Richard Heller Gallery、ニューヨーク、アメリカ)、「Punkt Art 2011 David Sylvian-in cooperation with Atsushi Fukui uncommon deities」(2011年、Sorlandets Kunstmuseum、クリスチャンサン、ノールウェー)、「convolvulus 福井篤・川島秀明展」(2009年、マイケル・クー・ギャラリー、台北、台湾)、「The Masked Portrait」(2008年、Marianne Boesky Gallery、ニューヨーク、アメリカ)、「六本木クロッシング」(2004年、森美術館、東京)などがあります。作品は高橋コレクション(日本)、国際交流基金(日本)、オルブリヒト・コレクション(ドイツ)、ジャピゴッツィコレクション(スイス/アメリカ)に収蔵されています。