展覧会
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執筆: カロンズネット編集
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公開日: 2010年 5月 12日 |
山本藍子の日本画は、豚の頭を描いています。 それは同時にレースを手描きで描いていくという花の絵でもあります。 この花と毒の組み合わせが、新しい日本絵画の地平を示しているのです。 例えば、新作『豚さんの肖像(大阪の鶴橋商店街にて購入した茹で豚)』を見てみると、茹でた豚の頭のグロテスクさは、描き込まれたレースで覆い隠されていて、不用意に見れば気がつかないものなのです。この豚という現実を直視しながら、しかもなお、それをレースの美しさで覆い隠して描くというところに、芸術というもののダブルバインド性が自覚的に展開されているのです。つまり芸術というのは、事実を隠して、透かして見る事なのです。 茹で豚を買った「大阪の鶴橋商店街」というのは、在日朝鮮人の町として有名なところで、しかも戦後のて土地財産の不法占拠が多発した地域です。しかし彼女に豚を描く政治的なメッセージや意図があるのか、というと、そういうものは、まったくないのです。
むしろ在日朝鮮人や部落解放運動といった現実を絵画で覆い隠していくものです。あくまでも政治ではなくて芸術であり、そしてリアルな現実ではなくて、それを覆い隠す絵画の成立なのです。 2010年代のアートシーンに重要な役割をするだろう新人日本絵画の新星を応援して下さる事を、心からお願いする次第であります。 彦坂尚嘉(美術家・気体分子ギャラリー代表)
「山本藍子新作、初期日本画展」同時期開催 気体分子ギャラリーweb:http://www.kitaibunshi.com/
山本 藍子 Aiko YAMAMOTO 1981 鎌倉生まれ 2004 武蔵野美術大学日本画学科卒業
【展覧会】 2009 仏像展(マキイマサルファインアーツ/東京)、Shock The Pig 山本藍子+元木みゆき(深川ラボ/東京) 2008 第44回神奈川県美術展 美術奨学会賞、piggy (マキイマサルファインアーツ/東京) 2007 第43回神奈川県美術展
※全文提供: マキイマサルファインアーツ
会期: 2010年5月21日-2010年6月1日
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最終更新 2010年 5月 21日 |