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町田夏生:MURMUR
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2009年 10月 28日

≪Whisper≫2009年〈当展出品作品〉|アクリル・キャンバス|72.7×60.6cm|画像提供:YOD Gallery copy right(c) Natsuki MACHIDA

町田夏生(Natsuki Machida, b.1980)の1年8ヶ月ぶりとなる個展。一般的に少女趣味を視覚化したものとされる "乙女" の世界観を、町田は戦後から現在に至る数多くの少女マンガに着想を得て、"乙女" の本質となる要素を抽出し自らの表現にこれまで描き落としてきました。 昨年の個展では、大規模な壁画的表現に加えて立体作品も空間に展開したインスタレーション形式で発表いたしました。ここで彼女が提示したのは、乙女心の発生によって展開する心理変化の具体例となるものでした。その空間には、他者への憧れを数量化した乙女心の発露として、眼や身体中から咲き誇らせる豊満な華々を、自らの口に入れて感情と共に消化するかのような表現を展開しました。この具体的な "乙女" の感覚の提示が、彼女の独特な色彩感覚や華の表現にインスタレーションのスタイルがあいまって、多大な反響を得る結果となりました。 当展では、町田がこれまでメインテーマとしてきた "乙女" から離れ、"MURMUR (ささやき・つぶやき) "というタイトルの下、ジェンダー論でも定義されている "乙女" の要素の一つである "フィクション" に焦点を絞って描き出された新作をご紹介いたします。 "フィクション" とは、リアリティ (現実) の対義語としての意味ではなく、現実に存在する要素を特別な組み合わせによって再構築することで、現実世界には存在し得ない新たな価値観を見いだすためのツールと言えます。そのツールとして描かれる装飾的なモチーフに加え、町田は人物像を描くことによって、その "フィクション" の要素を更に増していくのです。肖像画として彼女が一つの作品を描くところには、人間同士のコミュニケーションを重要視する前提があります。華に代表される装飾的なモチーフや色彩、更には人物を含めた全てのモチーフに過剰に付け加わるもの、あるいは省略やあえて描かれないものの間には、いわば「行間を読む」感覚世界が存在しています。彼女が言語的コミュニケーションに異議を唱える、つまり "フィクション" を通じて現実を改編しようとする行動が現れていると解釈することが出来ます。今回、この観念性とそうでないものが交わるコミュニケーションとしての "フィクション" が創りだす新たな現実世界への扉が、言葉にはっきり表れない "ささやき・つぶやき" のように聞こえるかのごとく、彼女の世界観としてギャラリー内で展開されていきます。 加えて当展は前回のような様々な素材・表現技法によるインスタレーション色を排除して、タブローの1点1点に込められた現実の再構成としての "フィクションのささやき" を、じっくりと感覚を研ぎ澄ませてご鑑賞いただくことで、町田が表現しようとする世界観を感じ取っていただければと思います。 町田 夏生(Natsuki Machida) プロフィール
1980 兵庫県生まれ
2005 大阪芸術大学大学院芸術制作研究科(絵画領域)修士課程修了 主な個展:
2007 「町田夏生展」(ギャラリー編・大阪)
2008 「町田夏生展 -《乙女》の衝動-」(YOD Gallery・大阪) ※全文提供: YOD Gallery

最終更新 2009年 11月 14日
 

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