桑田卓郎 展 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 9月 09日 |
桑田卓郎の作品がわたしたちを強く引きつけるのは、その一見すると陶磁器とは信じがたい鮮やかな色彩です。「素材の特徴を生かした、明るく楽しいものを作りたいと思っています」と語る桑田の作品は、それらが飾られる空間だけでなく、わたしたちの生活自体、そして心の中にも華やかな色を添えてくれるようです。プロダクトデザインの要素を孕んだ洗練されたフォルムは、卓越した技術の裏付け、そして豊かな陶芸の歴史の存在を思い起こさせます。桑田の作品は、まだ見ぬ陶芸表現の広がりを予感させます。 「芬芬(ふんぷん)=草花、雑草などの良いにおいがするさま」をテーマに、壺、花入れ、茶碗、水差し、振り出し、湯呑、皿など、約100点を展示致します。" 茶碗"(2009)では、桃山時代に美濃で始まった志野焼に用いられる長石釉(志野釉)を厚めに掛け、白色のかいらぎ(焼成した時にできる釉薬のひび割れ)をつくっています。その隙間からは、目の覚めるような鮮やかなブルーの素地が覗いています。また、2009年のテーブルウェア・フェスティバルでテーブルウェア大賞を受賞した、斬新な配色と繊細な白磁のフォルムが印象的なシリーズも展示いたします。伝統的な技法・素材と、瑞々しくシャープな感性の融合によって生み出される陶磁器作品が、まるで香りを放つかのように展示空間を華やかに彩ります。どうぞこの機会にご高覧ください。 作家プロフィール 全文提供: 小山登美夫ギャラリー |
最終更新 2009年 9月 11日 |
桑田卓郎の陶磁器は、鮮やかなカラーとフォルムとマテリアルで私たちの目を喜ばせてくれる。 特に「かいらぎ」という長石釉を厚めにかけて焼成した時にできる釉薬のひび割れは、工芸の可能性、奥深さを生き生きと感じさせる。まるでそれは、工芸に厚く圧し掛かる「伝統」の重みや素材の重量感が、ひび割れ、溶けだして生まれた新たな意匠なのかもしれない。 しかし、それを前衛や新しさという言葉で見るのではなく、作品から発せられる色彩の温度を私たちは感じればいいだけだ。