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Published: April 05 2012 |
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橋本倫は1963年横浜生まれ、88年多摩美術大学大学院油彩画専攻卒業。 昨年、東北地方に大きな被害をもたらした東日本大震災。橋本は地震後 しばらくして被災地へと赴き、その被害の実態を目の当たりにしました。 そしてその秋開催した北鎌倉ポラリスでの個展では、宗教をも超越した 『山越阿弥陀図』とも言うべき三幅対の大作『北溟』をはじめ、被災地へ の鎮魂の祈りを込めた作品を発表し好評を得ました。 今回の個展『孤氷地』では、昨年の展示でもテーマであった大震災によ る精神的ダメージからの回復と蘇生の問題がさらにスケールアップし展開 されます。 作品全体には“無常観”が通底していますが、その無常観を湛えた作品 は、決して観る者を厭世的な気分へと落し込めるのではなく、むしろ現世 的な喜びをもたらすものとして鑑賞者の前に顕われるでしょう。 昨年の北鎌倉ポラリスで発表した主要作品2点と、この2点から展開した 新作・大小7点、計9タイトル11点を展示予定です。本展は作家が25年近く 描き続けてきた中の一つの到達点となる展覧会であります。 是非ご高覧賜りますようご案内申し上げます。
[作家コメント] 大震災の発生により、“アートは無力だ”という言説が巷に溢れた。当然である。 自然の前に無力でない人間の営みは無い。アートは、人間のように弱い。 熱力学の第2法則により、無秩序は必ず秩序に打ち勝る。人は死ぬ。自然に属する生物たるが故に。 ヒトという複雑な秩序は、「死」というエントロピーの大海に呑み込まれて無秩序に戻る波打ち際の砂山である。 死の波には勝てぬ事実こそ、我々の営為の一 切が自然の掌中にあることの証明であるが、「死」と呼ばれる無秩序の超克は可能だ。人間は、生物として向かわざるを得ない究極の安定としての無秩序たる 「死」を超えて、時間から超出した「永遠」を求める本能を持つからである。 永遠は、一瞬、ヴィジョンとしてこの世に垣間見えただけで、生物たるヒトの短い一生を肯わせ、宇宙と存在の一切の消滅をも容認させる。それを諦念という。 誰にも観られず、一度も評価されることの無かった作品が永久に地上から失われても、その作品を通じて、稀に、密かに降臨した永遠は、決して失われることは無い。あらゆる死者が、生者の裡にあって寄り添い、親しく生き続けるように。 50億年後、我々の棲む星も膨張する太陽の軌道に呑まれて蒸発し、ガス体となって絶対零度の闇へと消える。 しかし、宇宙そのものの崩壊後も、永遠だけは残る。永遠の齎すヴィジョンは、「善きもの」である。 私はこの地上にあって、もう充分に善きものを観た。今、私が描く喜びと共に筆を擱いた画面は、善きもの(の断片のみ)を観る力だけを与えられ、結局はこの齢まで無為に過ごしてしまった怠惰な人間の、無力と無能の呟きにしか過ぎない。 (2012.3 橋本 倫)
[作家プロフィール] 橋本 倫 HASHIMOTO Osamu
1963 神奈川県横浜市生まれ 1986 多摩美術大学美術学部絵画科油画専攻課程卒業 1988 多摩美術大学大学院美術研究科修了(油彩画専攻)
<個展> 1988 [AENAOI NEFERAI](村松画廊/東京) 1994 [PROLIFIC UNITY](タカゲン画廊/東京) [具象は禁忌か?](川崎警察署大講堂/神奈川) 1996 なびす画廊(東京) 1997 なびす画廊(東京) 1998 なびす画廊(東京) 1999 なびす画廊(東京) 2000 なびす画廊(東京) 2002 なびす画廊(東京) 2004 なびす画廊(東京) 2005 [さまざまな眼147・橋本倫 展](かわさきIBM市民文化ギャラリー/神奈川) 2006 なびす画廊(東京) 2008 なびす画廊(東京) 2010 [CALL&RESPONSE](なびす画廊/東京) 2011 [北溟](POLARIS☆The Art Stage/神奈川)
<グループ展> 1978 [具象美術協会展](横浜市民文化ギャラリー/神奈川) 1979 [神奈川県美術展](神奈川県民ホールギャラリー/神奈川) 1988 [東京五美術大学連合卒業制作展](東京都美術館/東京) 1989 [平面美術研究会第1回自主企画展-on canvas展](埼玉県立近代美術館/埼玉) 1990 [平面美術研究会第2回自主企画展](埼玉県立近代美術館/埼玉) 2000 [春のおくりもの](なびす画廊/東京) 2001 [2月のおくりもの](なびす画廊/東京) 2002 [11&11 Korea Japan Contemporary Art 2002](省谷美術館/韓国) [11&11 Korea Japan Contemporary Art 2002 李靖妊・橋本倫 展](なびす画廊/東京) 2003 [第18回平行芸術展 <あざやか>の構造](エスパスOHARA/東京) [新年のおくりもの](なびす画廊/東京) 2004 [黒須信雄・橋本倫 展](ギャラリエ アンドウ/東京) 2005 [2月のおくりもの](なびす画廊/東京) [生誕100年オマージュ 長谷川沼田居 展](足利市立美術館/栃木) [ユートピアを探しに-想像力の彼方へ- 展](新潟県立万代島美術館/新潟) 2006 [大森博之+橋本倫 2人展](鶴見画廊/神奈川) 2007 [ヘイリ・アジアプロジェクトII 日本現代芸術祭](ヘイリ芸術村/韓国) [天体と宇宙の美学](滋賀県立近代美術館/滋賀) 2008 [De Mystica-召命-](Gallery Art Point/東京) [絵画のコスモロジー 黒須信雄・小山利枝子・橋本倫 展](多摩美術大学美術館/東京) 2009 [DE MYSTICA第2回展-\"アート\"全盛期における\"美術\"-](なびす画廊/東京)
橋本 倫 展「孤氷地」URL 全文提供:なびす画廊
会期:2012年6月4日(月)~2012年6月16日(土) 時間:11:30~19:00(土曜17:00まで) 休日:日 会場:なびす画廊
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Last Updated on June 04 2012 |