展覧会
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執筆: カロンズネット編集3
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公開日: 2014年 3月 28日 |
大森博之は1954年栃木県に生まれ、79年に筑波大学大学院彫塑専攻を修了。2012年には「光あれ!- 光と闇の表現者たち」展(栃木県立美術館)に出品。当画廊では2011年以来3年ぶりの個展です。
大森の彫刻は粘土の塑像によって作られます。そのため表面には、指跡で無作為に波打つ襞のような 形象が特徴的に現れます。それは薄い磁土においては花弁のように高貴で美しく、また蜜蝋を纏った表 面では臓物のようなぬめりとした生々しささえも感じさせます。 前回の個展では、その有機的な形象は陶土や磁土作品だけではなく、木彫、薄っぺらな金属、油画の 中へと写しとられました。そのように元の表面を繰り返し辿ることで、記憶や経験や時間が物質と混ざ り合って立ち顕われる「彫刻の閾」―彫刻を彫刻たらしめる何か―を大森は探っているのかもしれませ ん。そして大森の彫刻は、物質や次元を超越した「ねばねばした光」を内包し、その鈍い手触りの光は 鑑賞者を惹き付けるのです。
今回の展示では、新作彫刻などが出品される予定です。是非ご高覧賜りますようご案内申し上げます。
[作家コメント](前回個展時) 彫刻の閾
当たり前のことですが、彫刻と対面している時、像の現れる表の裏側を見ることはできません。少し回りこめば別の像が現れますが、その裏側は見えません。移動することで像がつながり、全体は立体の形象として想像できます。けれども、私に彫刻が教えるのは、見える半面は見えない半面と背中合わせであることの恐ろしさです。私が見ているのは空虚に飲み込まれてしまう一歩手前、別の次元に行きそびれた断片の表です。物体をぎりぎりまで薄くしてかろうじて立っている、非物質的な像が平たい物質に寄りかかっている影絵のような作品を考えていくと、像を映すスクリーンである物質が同時にその表面の肌理を煌めかせていて、見えて在ることの境を意識させます。そして向こうはわからない。空虚な妄想にすぎません。
ある物質が経験や時間によって練り込まれ別次元の物質にまで高まることがあります。酒とかチーズとか、彫刻もそうですね。それらは元の物質の面影を恋慕い呼び寄せる振舞いの度合に応じて物質の奥行を形成します。彫刻は物質を通して像を生み出そうとしますが、つねに像の出現は物質のベールによって遮られ遅れる。作り手は物質と混ざり合って、この落差を彫刻として厚みと奥行のある物質に変えていくわけです。薄っぺらな物体であっても、落差の処方で面影の浸透する閾を実在させれば彫刻になると言うことです。粘土でモデリングし焼成したものに油絵の具を塗り更に蜜蝋を重ねた仕事をすると、経過につれて記憶が曖昧になり、面影を手繰ろうとして油絵の具や蜜蝋を塗ることでいっそう原型から離れてしまう。そして表層は、現在に重なる物質で嵩張り、不快になるのだけれども、そこには何かが保存されている気がします。粘土、油絵の具、蜜蝋、の物質内部の光、混合する私の経験と記憶の光、そしてそれらが現実の光に触れて生まれる彫刻のねばねばした光。 (2011.9 大森 博之)
[作家プロフィール] 大森 博之 OMORI Hiroyuki 1954 栃木県生まれ 1977 東京教育大学芸術学科彫刻専攻卒業 1979 筑波大学大学院修士課程芸術研究科彫塑専攻修了
<個展> 1980 楡の木画廊(東京)('81,'82) 1983 駒井画廊(東京) ルナミ画廊(東京)('84,'85,'86,'87,'89) 1984 ギャラリートランスフォーム(東京) 1989 コバヤシ画廊(東京) 1990 なびす画廊(東京)('91,'93,'98,'00,'03,'06,'09,'11) 1991 ギャラリーMIU(神奈川) 1994 ギャラリー手(東京)('95,'96) 1997 SPACE・U(館林/千葉) JAZZオーネット(足利/栃木) 2004 鶴見画廊(神奈川)
<グループ展> 1981 「空間感情展」(神奈川県立県民ホールギャラリー/神奈川) 1983 「人工呼吸展」(パレルゴンII/東京) 1984 「あ・はれ展」(千葉県立美術館/千葉) 「大谷地下美術展」(大谷地下採石場/栃木) 1985 「日韓現代美術交流展」(東京・韓国テグ) 1986 「第5回平行芸術展」(小原流会館/東京・大阪) 「万象の変様展」(埼玉県立近代美術館/埼玉) 1987 「ルナミ・セレクション」(ルナミ画廊/東京) 1988 「八つの記憶素展」(なびす画廊/東京) 「接吻・ロダンに倣いて」(ルナミ画廊/東京) 「Handy Works by Hands」(ルナミ画廊/東京) 1989 「発生機のデッサン」(なびす画廊/東京) 「今日の作家展『かめ座のしるし』」(横浜市民ギャラリー/神奈川) 1990 「今日の造形」(栃木県立美術館/栃木) 「第三回アクリラ-アート展」(目黒美術館/東京) 1992 「TEMPVS VICTVM 生きられた80年代」(小原流会館/東京) 「開館10周年記念展『アダムとイヴ』」(埼玉県立近代美術館) 1993 「カオスと秩序-芸術のアトラクター展」(ギャラリー手/東京) 「<かたまり彫刻>とは何か」(小原流会館/東京) 1994 「金曜日のまれびとたち.その2」(なびす画廊/東京) 「KARADAがARTになるとき [物質になった器官と身体] 」(板橋区立美術館/東京) 1996 「匍匐は跳躍」(なびす画廊/東京) 1997 「京橋界隈」(なびす画廊/東京) 2004 「ディスタンス-栃木県出身作家の現在-」(栃木県立美術館/栃木) 「第19回平行芸術展 -彫刻は自分の半身を取り戻す-企画:峯村敏明」(小原流会館/東京) 2005 「2月のおくりもの」(なびす画廊/東京) 「大森博之+野沢二郎」(Takashi Saitoh Gallery/茨城) 2006 「大森博之+橋本倫 2人展」(鶴見画廊/神奈川) 2007 「プライマリー・フィールド美術の現在 -七つの<場>との対話」 (神奈川県立近代美術館・葉山/神奈川) 2008 「ラディカル・クロップス プレ展」(exhibit Live&Moris/東京) 「DE MYSTICA~召命~」(ギャラリーアート・ポイント/東京) 2009 「DE MYSTICA第2回展 -\"アート\"全盛期における"美術"-」(なびす画廊/東京) 「『ミュージアムズ・チョイス この一点』コレクション展Ⅲ」(栃木県立美術館/栃木) 2012 「光あれ!-光と闇の表現者たち」(栃木県立美術館/栃木) 2013 「版画天国」(なびす画廊/東京)
全文提供:なびす画廊
会期:2014年6月9日(月)~2014年6月28日(土) 時間:11:30 - 19:00(土曜17:00まで) 休日:日 会場:なびす画廊
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最終更新 2014年 6月 09日 |