米田知子「Japanese House」 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 10月 17日 |
蒋介石政権 時代の参謀総長であった王叔銘将軍の家 I、| 齊東街・ 台北 | Former house of General Wang Shu-ming, the Chief of Staff under Chiang Kai-Shek, Cidong Street, I 2010, C-Type Print, 65x83cm, ed.10 | 画像提供:シュウゴアーツ | Copyright © Tomoko YONEDA シュウゴアーツでは米田知子の個展を開催いたします。これまで米田は場所や物に潜む目には見えない「歴史」や「記憶」を テーマに制作してきました。今回の個展では2009年に台北のKuandu Biennale ”memories and beyond” に 参加した際に発表した、日本統治時代(1895年-1945年)に建てられた台北の日本家屋、具体的には、蒋介石政権時代の参謀総長で あった王叔銘将軍の家、鈴木貫太郎の娘の家、そして かつて「台湾の箱根」とも呼ばれたという北投温泉にあった日本家屋などの写真を展示します。台湾の歴史と共に日本家屋もそれぞれの時代を経て、持ち主を失い空き家になり放置された家や、日本の台湾統治時代後外 省人が住み始め様式の機能を変えながらも現在まで住み継がれている家等、米田が 台北滞在中にそれぞれの建物の記憶と、台北という場所の歴史を入念にリサーチしながら撮影し、今回の展示のために特別にプリントした 日本未発表の作品群をぜひご高覧下さい。 米田知子 Tomoko YONEDA 1965年兵庫県生まれ。1991年ロイヤルカレッジオブアート(ロンドン)修士課程修了。1999年VOCA展‘99(上野の森美術館)、主な個展に、2003年 記憶と不確実さの彼方(資生堂ギャラリー)、2005年A Decade After 震災から10年 (芦屋市立美術博物館)、雪解けのあとに(シュウゴアーツ)、2008年終わ りは始まり(原美術館)、2009年Rivers Become Oceans(シュウゴアーツ)、主なグループ展に、2004年 ノンセクト・ラディカル 現代の写真III(横浜美術館)、2005年横浜トリエン ナーレ2005(横浜赤レンガ倉庫、横浜他)、2006年フォトエスパーニャ2006(マ ドリッド)、2007年第52回 ヴェネチア・ビエンナーレ(ヴェネチア)、第10回イスタンブール・ビエン ナーレ(イスタンブール)、美麗新世界(北京東京藝術工程、北京)、2008年 第13回アジアン・アートビエンナーレ・バングラデシュ2008(バンググラデシュ)など。来年3月 までトーキョーワンダーサイト青山に滞在中。 全文提供:シュウゴアーツ 会期: 2011年10月29日(土)~ 12月3日(土) |
最終更新 2011年 10月 29日 |
蒋介石政権 時代の参謀 総長であった王叔銘将軍の家 I、
齊東街・ 台北
Former house of General Wang Shu-ming, the Chief of Staff under Chiang Kai-Shek, Cidong Street, I
2010, C-Type Print, 65x83cm, ed.10
画像提供:シュウゴアーツ
Copyright © Tomoko YONEDA
本展覧会に付けられたタイトルを観て、台湾で撮られた写真を展示しているのに「Japanese House」であることに違和感を覚えてはいけない。撮影されたのは、日本統治時代に撮影された日本式家屋である。政治に関わった人物が住んでいた家を選び、一見ではわからない歴史や記憶を持った場所を撮り続けている米田の作風が生かされている。
現在も使われている部屋もあれば、廃墟と化した部屋もある。日本家屋風でありながら、壁紙は欧米風の模様に替えられていたり、アイドルの古びたポスターが貼られていたりといった部屋の様子も面白い。こういったわかりやすい文化や時代の推移とともに、幾何学的な建築構造の中、部屋の奥の壁に正面から向き合う構図で撮影された写真の中での、剥がれ落ちそうな天井の板やめくれあがったポスターの隅などが興味深い。規律からはがれそうなものを鮮やかに浮かび上がらせる画面が鮮烈に印象に残る。
タイトルを観て、誰が住んでいたかを知ると、また考えさせられるものがあるだろう。写真に写し込まれるのは現在だが、背景にある過去の時間をも意識させる作品、じっくりと鑑賞したい。