ダチュラ畑を捕まえろ |
アートワーク |
執筆: 小金沢 智 |
公開日: 2008年 11月 24日 |
通常の照明は落とされ、展示室では点在する白熱灯が巨大な檻を照らしている。一見獰猛な獣でも飼育できるかのような檻だが、鍵は南京錠といささか頼りない。これではすぐにでも破られてしまうのではないかと心配してしまう。むろん、中に入れられているのは動物ではなく、植物である。けれども四方八方に伸びているその茎は、まるで檻を抉じ開けようともがいているかのように見えないか。そしてすぐさまこちらに飛びかかってきそうな、そんな身体性をその植物は有しているのである。 2006年、東は茨城県守谷に畑を持ち、自ら花/植物の栽培を開始した。今回東が作り出したのは、そこで6ヶ月をかけて育てたダチュラを題材にした物語である。キチガイナスビ、あるいは曼荼羅華とも呼ばれるダチュラは、その全部位に猛毒のアルカロイドを含む、強い幻覚作用を引き起こす薬物として知られている。そのダチュラが意志を持ったらどうなるか?そうした好奇心が東にはあったのだろう。会場の造作だけではなく、小説家・星野智幸に書き下ろしの小説を依頼し(「プラントハンター」、『AMPP』収録)、それを元に短編映画も制作した。その中で繰り広げられる物語を知れば、会場に置かれた檻とその中のダチュラが、物語の終わりではなく始まりであることに気づくはずだ。 作品詳細アーティスト: 東信 |
最終更新 2015年 11月 01日 |