Botanical Sculpture #2 holding |
アートワーク |
執筆: 小金沢 智 |
公開日: 2008年 11月 12日 |
コンクリートに突き刺さった銀色のハンドクリップの先端に、テッポウユリの細長い緑色の蕾が継ぎあわされている。「Botanical Sculpture #1 Assemblage」(2008年2月)に続くシリーズの、今回のテーマは「holding」(捕まえる)。メタリックな触手に捕獲された蕾は、しかしそれぞれのクリップが保水されているため、茎から離れているにもかかわらずその花を咲かせていく。 ラッパ銃に似ているためにその名がつけられたというテッポウユリは、咲くその先を射抜くかのような鋭いフォルムが特徴である。だが、白を基調とした花冠とその全体は「鉄砲」という形容とは相反する儚さ、弱々しさも同時に備えている。そのどちらもテッポウユリの欠くべからざる要素であるのだが、今回東は茎をステンレスのハンドクリップに置き換えることで後者を削ぎ落とし、前者を強調することを選択した。人工的なそのいくつかの関節が折り曲げられることで、花冠は今にも飛びかからんとする獣のように見るものに向かって咆哮する。けれどもそれは、空に浮かぶ月のように孤独に見えた。ここで、強さはその裏に孤独をかかえている、などといった一般論を言うつもりはない。東が曝け出させたのは、花の持つ感情だった。それこそ、花を「お花」というオブジェから解放させる鍵になるものにほかならないのである。 作品詳細アーティスト: 東信 |
最終更新 2015年 11月 01日 |