早川克己:Double:Vision |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 6月 11日 |
今回の作品群についてのキーワードを列記してみます。 作品は一見、空中から俯瞰した都市という感じや、宇宙空間を想起させる抽象画のようですが、絵の具を何層にも重ねて色層を作り、表面を電動ドリルで削り取って色を掘り出します。光沢のある滑らかな平面と、削られた無光沢の凹凸の対比がテクスチャーを形成して、絵画の物質性を引き出し、従って色層の選択と削り取る程度や方法によって、作品は全く違ったものになります。 今展ではオープニング展での展示に見られた2 種類の作品構成となり、そうした意味で個展タイトルが「Double:Vision」(ダブルビジョン)と名付けられています。この二つの違いは極めて単純で、画面に描かれる対象のエッジがシャープかソフトかということだけです。しかしそこに立ち現れる絵画は全く異なった表情を持ちミラクルです。つまり今回の展示で言えば、四角はシャープ丸はソフトということになり、たったこれだけのことで画面内の地と図の(対象と背景)関係が大きく変わってきて、輪郭線の問題を提起しています。また同時に、物体としての絵画か、イリュージョンとしての絵画かという意味での、絵画を巡る二重性という問題を意識してのタイトルとなっています。 作品内容に関しては、今回画面の基本構造に透視図法を用い、ダヴィンチの「最後の晩餐」が意識されていますが、そこに作者は宗教性や崇高性の現れを見るからだと言います。制作者の意図と見る人との意識の乖離は良くあることで、アートの面白さはむしろそうしたところにもあります。作者の意図を理解してから作品を見るか、理解してから作品コンセプトを考えるか、あるいはストレートに感じたものをそのまま直接受け止めるか、鑑賞者に委ねられています。 今年もニューヨークでの個展やイスタンブールでのグループ展参加など、海外での展示も予定されその活躍が期待されています。 1970 栃木県生まれ ※全文提供: ギャラリーモモ |
最終更新 2009年 7月 04日 |