瓜生祐子:plate journey |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 6月 23日 |
本展は7月21日から9月11日まで京都芸術センターで開催される夏休み企画展「sweet memory ─おとぎ話の王子でも」の関連展覧会として、その出品作家のひとりである瓜生祐子の作品を個展形式で展観するものです。 瓜生祐子(うりゅう・ゆうこ 京都・1983年~)は、これまでおもに「食べ物」をモチーフにした絵画を制作していますが、それらをまるで「風景画」のように描き出すことで、そこに独自の世界を提示する若手美術家です。瓜生は「食べる」という行為によって、美しく盛り付けられた食べ物の形が、スプーンやフォークなどにより徐々に崩され、その姿を変化させていくプロセスに着目します。そして、刻々と変化していく食べ物の形や輪郭・断面を捉え、その中にまるで「連なった山脈や急な渓谷」といった風景を見つけ出します。ありのままが描かれた《Koraku Bento》、《Mont Blanc》、《biscuit》などの作品は、まるで上空から見下ろしたどこかの風景のような、大きな視界を鑑賞者に与えます。また、その作品の特徴は制作方法や支持体の形にも見られます。 柔らかな色彩で描かれた作品は、よく見ると木製パネルと綿布の二重構造になっている事が分かります。これは、まず対象をおもにアクリル絵具により木製パネルに描き、その上から綿布により全体を覆い、綿布の上にさらに鉛筆などで線を描いていくことによるものですが、瓜生は「作品に綿布をかけることで、一度描いたもの、自分の残した痕跡にとらわれず、客観的に作品との距離感を取ることができる」と言います。また、作品の形状には角に丸みを帯びたものや円形のものが多くありますが、それはお皿の上に載せられた食べ物を目の前にした時の視点を意識させるとともに、顕微鏡や望遠鏡により異なる世界を覗き見る感覚を呼び起こします。これらは、視点を変化させることや想像することそのものの楽しさを鑑賞者に気づかせるとともに、作品の中に新たな「何か」の発見を促すように働きかけます。 「お皿の上には新しい世界が誕生し、食べることで崩壊しながら、やがて消滅してしまうまでのドラマがある」と言うように、瓜生にとって「食べ物」を描くことは、「食べる」という行為の先にある、消えてなくなる「もの」の美しさや儚さを留めておく試みであるといえるでしょう。鑑賞者は日々繰り返す「食べる」という行為の中に、その美しくも儚い風景や瞬間が確かにあったのかもしれないと想像することで、新たな「食」への眼差しを発見できるのではないでしょうか。 ※本展では、おもにお菓子や甘いものをテーマにした京都芸術センター「sweet memory─おとぎ話の王子でも」への出品作品と異なる、よりバラエティー豊かな瓜生祐子作品およそ10点を展示いたします。 【ステイトメント:瓜生祐子】 瓜生祐子 URYU Yuko 主な活動 全文提供: Gallery PARC 会期: 2011年7月26日(火)-2011年8月7日(日) |
最終更新 2011年 7月 26日 |