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岩尾恵都子 展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2010年 7月 09日

2009年|1000x803cm|オイルオンキャンバス | 画像提供:a piece of space APS|Copyright © Etsuko Iwao

APS企画展シリーズ: a piece of work の第19回。

APSでは2005年に第1回目の岩尾恵都子展を開催いたしましたが、第2回目にあたる今展は、APSとギャラリー・カメリアの2か所での共同開催とになります。

岩尾は、2006年に大規模な個展をギャルリー東京ユマニテと第一生命南ギャラリーで行いました。その後、2007年の個展を経て、今展は実に3年ぶりの発表となります。この間、岩尾は従来の広い茫漠とした安堵と不安の世界の中に、「日常生活」を含めた世界を表現してこそ「自分」であるとし、さまざまな試みを通して模索を続けてきました。その追究から辿り着いた、より全体的な「今の自分」を今回の展示で見せてくれることでしょう。

岩尾恵都子(1968年東京生まれ)
岩尾恵都子は1993年に多摩美術大学大学院を修了し、2000年には新人作家の登竜門であるVOCA展に選ばれ、大賞を受賞。それを機に、広く紹介され注目を集めた。のびやかで広い世界を描く彼女の作品の美しい画面には、常に不安と安堵が共存している。

今展は、実に3年ぶりの発表である。この間、岩尾は試行錯誤をしつつ、さまざまな試みの作品を制作してきた。そして、画面に現れた大きな変化は「人」の登場である。2005年にAPSで展示した作品には群集らしきものが認められるが、2006年のギャルリー東京ユマニテと第一生命南ギャラリーでの大規模な個展の際には、赤い洋服を来た抽象的な少女の姿がどの作品にも登場する。

岩尾によると、この少女は自分の娘に限らず「人」という存在を意味するという。それまでは「美術表現」と「日常生活」を分けて考えていた彼女が、日常を含めた表現を追求し始めた。まぎれもない「自分」を表現するための自然な流れであったのであろう。それは例えば、今まで自分をなんとなく規制していた大好きな「花」を具象的に色鮮やかに描くことであった。また、日常と言えば当然身近である「人」の姿もよりはっきりと描かれるようになった。それは小学生の娘がすくすくと日々成長する姿であり、また、難病を患って寝たきりの義父や介護に追われる義母の姿であったりもするのだろう。ある作品では、ぼんやりとした少女の顔から限りなく空に伸びていく木の無数な枝が描かれ、または、空とも見える人の顔から伸びる枝が描かれた作品がある。これらの「枝」はまさに生死を分かつ血管であることは間違いないだろう。それは、彼女のあまりに近くにある「生と死」をあらわに表現したことによると思われる。

そして、今展の最近作では、表情がはっきりと描かれた顔が登場する。顔を描くのは岩尾にとってはかなり冒険であることは想像できるが、この「顔」は「山のような塊に過ぎない」と彼女はいう。「山」は日常の現実、もしくは、核となるものを表しているのだろうか。

APSは 「a piece of work」で、今まで通り1点の展示で空間を息づかせ、そして、カメリアでは自然光とレトロな空間の中での展示となる。

全文提供: a piece of space APS


会期: 2010年7月14日(水)-2010年7月31日(土)

最終更新 2010年 7月 14日
 

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