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TRANS COMPLEX - 情報技術時代の絵画:彦坂敏昭・村山悟郎
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 12月 10日

彦坂敏昭《燃える家 No.09》2007 年|1160×1460mm

村山悟郎《「私」が再魔術化する時》2010 年|5500×6000mm
photo by 加藤健|制作協力:資生堂

「TRANS COMPLEX - 情報技術時代の絵画」はアーティストの村山悟郎が自ら企画した展覧会です。「絵画の現在形」をテーマに、彦坂敏昭と村山悟郎がそれぞれ新作絵画を発表するグループ展を開催します。

複雑系科学や人工生命研究などの新しい現代科学思想に色濃く影響を受けた二人のアーティストが提示する「絵画の現在形」は、アートマーケットに支えられて具象絵画が興隆する今の日本のアートシーンにおいて、それらとは異る、またかつての「抽象」よりも高次の、「具体的な抽象性」を持つ絵画として登場します。

2010 年6月20日に京都芸術センターで開催された展覧会企画公募の公開審査「展覧会ドラフト2011」<審査員:長谷川祐子(東京都現代美術館チーフキュレーター)平芳幸浩(京都工芸繊維大学美術工芸資料館准教授)>において、審査員の二氏によって100 件の企画応募の中から選出され、京都芸術センターでの展覧会開催が決定致しました。AISHO MIURA ARTS(東京、曙橋)にもこの展覧会企画にご賛同頂き、2011 年2月に京都、4月には東京に巡回して本展を開催致します。

展覧会概要「絵画の現在形」
この展覧会企画では、この情報技術時代に生きる二人のアーティストの絵画を対置させ、その同時代性を 照らし出し、「絵画の現在形」を提示します。

現代は、そこに居ながらにしてあらゆる物や情報を手にすることの出来る高度に情報化された社会です。 そこではもはや芸術において、素材の意味的選択は大きな価値を持ち得ず、それらを如何に組み合わせる かという「関係付けの論理」が改めて問われることになります。

1980 年代後半からコンピュータの情報処理の高速化とともに起こった複雑系科学や人工生命といった研究 領域はそういった意味で私達にとって示唆的でした。それらは相互作用を含む複雑なシステム、自己組織化、 カオスなど、新たな関係の論理を提示していったからです。そして複雑系の理論は、要素間の相互作用の 結果が全体として予想しないような機能、構造、振る舞いを示すという「創発現象」のような創造的事態 まで見いだしてきました。

本展覧会に出展する彦坂敏昭と村山悟郎はいずれもこうした研究領域に強い影響を受け、それぞれの制作を 構成しているアーティストです。

二人は1983 年の同年生まれで、異なる出自を持ちながら、その制作には相同性を見いだすことが出来ます。 それは、それぞれの制作において「システム」や「ルール」といった「関係付けの論理」を積極的に内在させ て創造性を獲得しようという志向にあります。これを私達は情報技術時代の同時代性と見ているのです。 それぞれの「システム」や「ルール」という概念への解釈は異なりますが、それらを抱えることで現れる像 とその創造的事態に可能性を見いだしていることに、希有な一致を見ます。

私達はこれら二つの絵画を同時多発的に対置し、同時代性を表出させ、情報技術時代の絵画の現在形とその 創造性を提示したいと考えています。

彦坂敏昭 HICOSAKA, Toshiaki
http://www.tohico.com/
彦坂は、自身と制度という関係を想定したうえで絵画制作の「ルール」を構築し、その「ルール」に対して自分が如何に 介入し、どのように相互作用すれば創造性を獲得することが出来るか、腐心します。それは、現代の選択肢過剰な世界を 生き抜くように、自らに延々と決断を迫り続ける方法論でもあります。 本展ではこれまで発表してきた「テサグリの図画」や「燃える家」などの一連の絵画作品とは異なる新たなアプローチで 制作した新作絵画を発表します。彦坂は、ルールやシステムなどと寄り添うことの可能性や不可能性を浮彫りにし、見知 らぬ誰か達の意思の統合によってプログラミングされたこの世界へ、出入り自由の状態を出現させたいと考えています。

1983 年 愛知県生まれ
2005 年 京都造形芸術大学情報デザイン学科卒業
主な展覧会
「ARKO 2009 / 大原美術館(2009)」、「shiseido art egg 彦坂敏昭 / 資生堂ギャラリー(2008)」、「MOT アニュアル2008 解きほぐすとき / 東京都現代美術館(2008) 」

村山悟郎 MURAYAMA, Goro
http://goromurayama.com/
村山は、自らを絵画的システムとして捉え、その行為の反復的な作動によって発生する学習過程と、要素間の相互作用の 集合が新たに喚起する創発という事態について、注視しています。もはや、メディアもコンテンツも存在しない、絵画の 「行為のシステム」としての在り方を主張します。 本展では、これまで村山が提示してきた「紐を編んでそこに描く」システム、そしてウォールドローイングのシリーズを さらに発展させた新作を発表します。予測不可能性を持ちうる作品制作システムとその展示とは何か、それを問います。

1983 年 東京生まれ
2010 年 東京芸術大学大学院美術研究科絵画科壁画第一研究室 所属
2010 - 11 年 Chelsea College of the Arts and Designs MA fine art course( 交換留学)
主な展覧会
「shiseido art egg 村山悟郎」/ 資生堂ギャラリー(2010)」、「MOT コレクション- MOT で見る夢 / 東京都現代美術館(2009)」

関連企画 「アートとサイエンスについてのレクチャー」
2月5日(土) 池上高志 氏 (複雑系科学研究者/東京大学教授)
2月6日(日) 吉岡洋 氏  (美学・芸術学/京都大学教授)
池上高志さんは複雑系科学の研究者です。単著には「動きが生命をつくる- 生命と意識への構成論的アプローチ」(青土社2009)があります。その一方、現代音楽家の渋谷慶一郎氏とコラボレーション、ICC やYCAM(山口)などでのインスタレーションの発表など、表現活動を展開するアーティストでもあります。吉岡洋さんは美学・芸術学の視点から、現代科学の与えた文化的インパクトや、デジタル・メディア、電子的ネットワークという新たな環境における表現活動、文化一般についての著作活動を行ってきました。著作に「情報と生命- 脳・コンピュータ・宇宙 」室井尚・吉岡洋( 新曜社1993)や「<思想>の現在形- 複雑系・電脳空間・アフォーダンス」吉岡洋(講談社 1997)などがあります。アートとサイエンスに精通したお二人をゲストに迎え、複雑系科学や現代科学思想を広く一般向けに紹介するレクチャーと、それらの新しいサイエンスとアートとの関わりについてお話していただく予定です。


会期: 2011年2月5日(土)-2011年2月27日(日)
会場: 京都芸術センター ギャラリー北・南

最終更新 2011年 2月 05日
 

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