阿部瑞樹:from the car |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 10月 20日 |
現代社会に於いて、自動車の存在は無くてはならないものとなってきました。自動車は道具としての様々な役割を与えられ、物や人の大きな流れを作り出し、今となっては道具として当たり前に存在するものとなっています。しかし、自動車という物は道具としての役割を持つだけでなく、所有者のパートナーや家族、ペット等の位置づけをされ、より生物的に扱われるようになってきました。 工業製品であり、道具であり、無機物であるはずの自動車に対して、愛着を持ち、まるで家族のように扱ったりするのは何故なのか。 「物を大切にする」という精神はよく子どもの頃から教えられたが、物を本来のあるべき姿ではなく、別の物として見る「見立て」の精神が日本には古くからあり、それが私たちに受け継がれて今に至っているが故に、こういった現象が起こるのではないでしょうか。無機物を有機物に見立てたり、そもそも生死の概念が無いものに、どこか生を感じたりすること等、自動車には様々な芸術的要素が存在するモチーフだと考えます。普段強く意識していない自動車の様々な要素を、私なりの表現と手法で作品化することにより、新しい価値観や視点を伝えていきたい。 19世紀末に誕生した自動車という文明の利器は、21世紀に至る現在まで技術革新を何度も繰り返し我々に多大な恩恵をもたらしてきました。しかしその恩恵はある意味様々なものとの引き替えに得たものでもありました。燃料に代表される自動車が現在抱える問題とは、自然との調和や基幹産業としての役割、それらを成り立たせるための更なる科学技術の進歩等、21世紀の我々がこれからあらゆる部分で克服していかなければならない社会の問題を象徴しているようにも感じます。阿部瑞樹が画くかわいい車達の表情からは色々な問題を克服し人間と共生していきたい、いかなければならない車の感情が聞こえてくるような気がします。 【作家プロフィール】 ※全文提供: COMBINE 会期: 2010年11月15日(月)-2010年12月10日(金) |
最終更新 2010年 11月 15日 |