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松本央:無常の空間-108人の自画像-
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 5月 21日

画像提供:COMBINE |Copyright © Hisashi MATSUMOTO

 

「ありのままの自分を見つめる」これは、私が自分をモチーフに作品を制作するに当たって、テーマとしていることの一つである。半年の間、毎日ただひたすら自分の姿を鏡で見て、この『108人の自画像』は、完成した。画面の中に描かれた108人の顔は一つとして同じものは無い。だが、それらはすべて紛れも無く私(松本央)の顔である。数多くの自分を描いていく中で、その日の体調や気分によって描き方が変わり、また、それによって画面に現れる顔の形や表情といったものも変化していく。これはアナログな方法による仕事の性質上、どうしても出てくるブレだ。しかし、画面に描かれているのは、私の容姿だけではない。筆致や絵の具をぼかした指の跡といった身体的な痕跡、または、その日の気分や体調といった内的なもの、さらには、この作業をおこなった半年間の時間に至るまで、もれなく絵の中に記録されているのだ。つまり、この「108人の自画像」は、私の外見や内面、私を取り巻く空間すべてをひっくるめた「ありのままの自分」を描こうと試みた私の行為の記録である。

松本央は1983年京都生まれの27歳の画家である。彼は終始一貫自画像を画き続けることを決意した画家でもある。芸術とは社会を映す純粋な鏡である。しかしその鏡に映し出される社会の様相とは芸術家個々が様々な方法によって表現し数限りなく存在する。一つだけ、どの表現にも当てはまる原則がある。この鏡に映し出されるものとは、芸術家個人の内面からしか生まれないということだと思う。そう考える時、画家が社会の中に存在する様々なものについて表現する時、常に自分というフィルターを透過させることによってその考えを世の中に訴えているという事になる。もっと突き詰めて言えば本質は社会に生きる自己を見つめ続けている生き物でもある。松本央はそのシンプルな考えに沿って自画像という手法を選択し、自らに与えられた、社会に生かされている時間全てをつぎ込むことを決意した画家なのです。

【作家プロフィール】
1983年 京都生まれ2007年 京都精華大学芸術学部造形学科洋画専攻 卒業2009年 京都精華大学大学院芸術研究課博士前期過程洋画専攻 修了 個展 2004年「マツモトヒサシ展」 京都精華大学7−23ギャラリー 2007年「Who are you?」 画廊編、ぎゃらりーかのこ(大阪)2009年「松本央展 Protozoa」 アートスペース虹(京都) グループ展等2006年「Intersection points」 京都精華大学ギャラリーフロール 2008年「第62回二紀展」初出品初入選。

※全文提供: COMBINE


会期: 2010年6月22日-2010年7月15日

最終更新 2010年 6月 22日
 

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