| EN |

ニエプスの箱・左
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 11月 09日

画像提供:CASHI

3人の若手写真家による、展示替えを挟んだ二部構成の写真展、前半。

”ニエプスは写真を霊力捕獲装置であると夢想していた”

写真の発明を導いた一人、ニセフォール・ニエプスは写真の原理を以下のようなことと夢想していたという説があります。

『ニエプスは、光はさまざまな物体に触れるとボールのように跳ね返る「流動体=霊力(フリュイッド)」のようなものであると夢想していた。

彼は、写真によってこの「流動体=霊力」を捕獲し、それが跳ね返るのを避けながらその刻印を定着しようとしたのである。』

(『明るい部屋の謎』セルジュ・ティスロン著、青山勝訳 62 ページより)

シャッターを切るという行為はまさしく捕獲行為です。写真家達は追憶、空気、光、様々なものをカメラの中に閉じ込め、定着させてきました。その捕獲できるものが霊力のようなものとするなら、なんとロマンチックで素敵なことでしょう。

ニエプスの、写真が霊力を捕獲する装置であるというその当時の考えを実証すべく、この度CASHI では観るものを揺さぶるような力を閉じ込めた写真達を、一度の展示替えを挟み同じ作家達で一部、二部と別の展示構成を行いまるでレコードのA 面B 面のように作家達の裏と表を見せる試みを行います。

出展作家:杉浦慶太,助田徹臣,村上友重 ※全文提供: CASHI

最終更新 2009年 11月 17日
 

編集部ノート    執筆:小金沢智


「ニエプスの箱・右」(2009年11月6日〜14日)に続く、杉浦慶太、助田徹臣、村上友重の写真家三名によるグループ展。助田のイン スタレーションと言っていい作品が入ってすぐの床に展示され存在感を放っていた前回と異なり、すべての作品は壁面に掛けられ展示が随分すっきりしている。 両会期通じて最も関心を引かれたのは、「右」で《雲》と題するどう見てもただのまっ白にしか見えない作品を、「左」では「右」と対照的に暗闇の中緑色の光が蠢く作品を発表した杉浦慶太。どちらも、「はたしてこれは何を撮ったものなのか」という〈わからなさ〉があり、それが作品の大きな魅力に繋がっている。そう、すべからく芸術と呼ばれるものにはこの〈わからなさ〉が不可欠なのだ。


関連情報


| EN |