展覧会
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執筆: 記事中参照
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公開日: 2021年 5月 21日 |
【展覧会コンセプト】 「仏像修理師」という職業を聞いたことがありますか。 名前のとおり「仏像を修理する技術者」のことを指します。確立したのは明治時代、岡倉天心によって修理専門の団体が組織され、その意志は現代にも引き継がれ、技術も日々進歩しています。 仏像の表面に漆箔(しっぱく)や彩色が施され分かりにくくはなっていますが、仏像の土台となる素材の多くに「木材」が使われています。そのため、放っておくと動物・虫・菌などの被害に遭い、朽ちてしまいます。 現在、寺院や博物館などで当たり前のように拝観できる仏像は、これまでに修理の手が加えられてきました。だからこそ、制作から何世紀経った今でもお会いすることができるのです。 修理の内容は仏像の状態によって大きく異なりますが、私たちには大切にしている3つの理念があります。それは、「現状維持」「時代踏襲」「耐久性」です。 仏像が経てきた歴史を尊重しながら手を加えすぎて印象を変えてしまうことのないこと、 足りない箇所を作る際は同じ時代の作風や材料・技法を参考にすること、 これらを踏まえながら仏像が今後も継承されるように強度を加えること。 この理念を守るため、修理で手を動かす時間と同じくらい修理計画にも時間をかけます。 展覧会名「つなぐ↓↑なおす」には、仏像・文化財を修理し次世代に継承してきたこれまでの歴史の一端を、三乗堂の活動を通じて知ってほしいという思いを込めました。 何事もなかったかのようにたたずむ仏像も、長い歴史の中で多くの人が大切にしてきたからこそ現在まで遺(のこ)っています。現代に継承された仏像は、現代を生きる私たちが次世代に繋げなければならない、そんな思いで私たちは仕事をしています。 目の前の当たり前は多くの思いによって支えられている、そのお手伝いの一片をご覧ください。 また本展では、同年代で構成され同じ地域で活動する、inaho Film制作の映像作品による新たな視点を加えています。仏像修理工房の日頃の空気を、少しでも身近に感じていただければ幸いです。 【出品者 略歴】 ◎一般社団法人 三乗堂 SANJOU-DOU 2017年4月、栃木県鹿沼市に設立。「文化財を後世へ伝えるお手伝い」を理念に主に仏像などの木彫文化財の修理、制作を行っている。 設立メンバーは中愛、井村香澄、森崎礼子の3人。栃木県日光市輪王寺三仏堂の「平成の大修理」に携った事をきっかけに3人が集結。2017年3月同事業終了後、栃木県で仏像修理を続けていくことを決意し、共同設立。 ○中 愛 NAKA Ai 1989年生まれ。神奈川県出身。2012年多摩美術大学美術学部彫刻学科卒業。 仏像修理技術者を目指すため、2012年〜2014年に東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室にて古典技法、仏像修理を学ぶ。 卒業後、仏師工房でアシスタントを約2年。その後、公益財団法人美術院国宝修理所に技術職員として栃木県日光市輪王寺三仏堂「三尊」の修理に約1年半携わる。2017年4月仏像修理工房「一般社団法人三乗堂」設立。 ○井村 香澄 IMURA Kasumi 1989年生まれ。長野県・新潟県出身。2012年東京学芸大学教育学部環境総合科学課程文化財科学専攻卒業。 仏像修理技術者を目指すため、2012年〜2014年に東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室にて古典技法、仏像修理を学ぶ。 卒業後、公益財団法人美術院国宝修理所に技術職員として栃木県日光市輪王寺三仏堂「三尊」の修理に約3年携わる。2017年4月仏像修理工房「一般社団法人三乗堂」設立。 ○森崎 礼子 MORISAKI Reiko 1988年生まれ。奈良県出身。富山大学芸術文化学部芸術文化学科デザイン情報コースを専攻し、2010年〜2011年にチェコ共和国プラハ美術工芸大学へ留学。帰国後、2012年大学卒業。 卒業後、奈良県内にてグラフィックデザイナーアシスタントなどを経て、公益財団法人美術院国宝修理所に技術職員として栃木県日光市輪王寺三仏堂「三尊」の修理に約2年携わる。2017年4月仏像修理工房「一般社団法人三乗堂」設立。 ◎inaho Film inaho Film 伊納達也(ドキュメンタリー映像作家)とイザギレ・ファビアン(CG・VFXアーティスト)、伊納華(翻訳家)の3名で構成されたフィルムメイキングチーム。2019年から栃木県鹿沼市にスタジオを構え、コミュニティをテーマにショートフィルムの制作を行っている。 ○伊納 達也 INO Tatsuya 1988年生まれ。愛知県出身。主にノンフィクションのジャンルの映像ディレクター/カメラマンとして、現場と人のリアルな魅力を映像に写し込む表現を追求中。また、様々なソーシャルプロジェクトの映像での発信を担当。2017年に株式会社inahoを設立し、その後2019年に拠点を栃木県鹿沼市に移して活動している。 ○イザギレ Z.ファビアン Fabián Izaguirre Z. 1992年生まれ。コスタリカ出身。大学でCGアニメーションを学ぶ。2015年に来日し、宮城県と広島県で様々なボランティア活動に携わった。その後、栃木県鹿沼市の地域おこし協力隊として3年間、グラフィックや映像を通して市の魅力を発信。2019年から、株式会社inahoでCG・VFXアーティストとして活動している。 ○伊納 華 INO Hana 1988年生まれ。大阪府出身。大学時代にカナダ・オンタリオ州のクイーンズ大学に短期留学。卒業後、日本映像翻訳アカデミー東京校で英日映像翻訳を学び、テレビ番組やショートフィルム、チュートリアル動画などの字幕を手掛ける。2017年、同アカデミーロサンゼルス校で日英翻訳、通訳を学んだのち、2019年より株式会社inahoで主に海外案件を担当している。 【展覧会詳細】 「つなぐ⇄なおす」 5月22日(土)〜7月3日(土) 12:00〜19:00(金・土は20:00まで) 休場日:火曜 入場無料 【関連イベント】 ●トークショー 6月26日(土)13:00〜14:00 田中ひろみ(女流仏像イラストレーター) イラストレーター&文筆家。奈良市観光大使。女子の仏教サークル「丸の内はんにゃ会」代表。よみうりカルチャー、中日文化センター講師。著書多数。 ●ギャラリートーク 6月26日(土)14:30〜15:30 ※トーク形式など変更になることがあります。詳しくはホームページをご覧ください。 http://www.akibatamabi21.com/exhibition/210220.htm 【展覧会場】 アキバタマビ21 〒101-0021 東京都千代田区外神田6-11-14 3331 Arts Chiyoda 201・202 電話:03-5812-4558 URL: http://www.akibatamabi21.com アクセス: 東京メトロ銀座線末広町駅4番出口より徒歩1分 東京メトロ千代田線湯島駅6番出口より徒歩3分 都営大江戸線上野御徒町駅A1番出口より徒歩6分 JR御徒町駅南口より徒歩7分 JR秋葉原駅電気街口より徒歩8分 ※「アキバタマビ21」は多摩美術大学が運営する、若い芸術家たちのための作品発表の場である。ここは若い芸術家たちが、互いに切磋琢磨しながら協働し共生することを体験する場であり、他者と触れ合うことで自我の殻から脱皮し、既存のシステムや権威に依存することなく自らをプロデュースし自立していくための、鍛錬の場でもある――そうありたいという希望を託して若い芸術家たちにゆだねる、あり得るかもしれない「可能性」の場であり、その可能性を目撃していただく場所である。
http://www.akibatamabi21.com/
全文提供:アキバタマビ21
会期:2021年5月22日(土) 〜 2021年7月3日(土) 時間:12:00~19:00(金・土は20:00まで) 休日:火曜日 会場:アキバタマビ21
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最終更新 2021年 5月 22日 |