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変容 -自己を内包しつつ- 企画:宮本ルリ子
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 9月 22日

稲崎 栄利子 《五秒後の世界》和紙・墨(黒台紙)| Copyright© Eriko Inazaki | 画像提供:ギャラリーすずき

小島 修 《蒼茫 07-09》34×28×27 | 陶ガラス | Copyright© Osamu Kojima | 画像提供:ギャラリーすずき

企画:宮本ルリ子

ちいさな子どもたちが行為に没頭し、目標や評価など気にせずつくった、線や形の中には、生き生きとした野生を感じます。人がつくり出したものというより、自然そのものが何かをしているようでもあります。彼らは自己意識が低く、世界と一体した存在のようです。大人になると、私たちは距離をもって世界と接するようになります。切り離された存在。この距離感を埋めるためのさまざまな行為があり、創作活動もその一つといえるのでしょう。

ここで紹介する二人の陶芸作家は、異なる対象への取り組み方をするのですが、それぞれの個性から生まれた質の高い作品には、不思議な類似を見ます。稲崎栄利子は、素材に挑戦するかのように、全ての制作過程において細部をとことん創り込みますが、対象とのギリギリの攻防の緊張から新しい局面を引き出すことに成功しています。反対に小島修は、すでに対象が持つ特徴の多くを受け入れつつ、独自の「もの」へと進化させる行為に邁進します。共通するところは、対象との深い交流で、個性は内包しつつも、それぞれのこだわりの制作行為の中で自我はそぎ落とされていくようです。彼らの作品は、個性の断片(自己)と自然の断片(対象)が深く一体となることで、新しい自然(作品)へと変容をとげるのです。

本展では、この二人の作家の卓越した作品から、自己意識を内包しつつ、世界と共にあって、大いなる創造に深く関わった、変容された「もの」をご覧いただきます。

稲崎 栄利子
稲崎栄利子の作品の中には、直径2mm程度の針状の粘土を数ヶ月に渡り構成し形づくり、長石を主とした、焼くとガラス質になる素材と組み合わせることで、鉱物と植物が合体した作品があります。加えて、針状の粘土の先端には細い筆で1本1本丁寧で緻密に点描が施されています。

彼女は全ての過程において細部にとことんこだわります。完成された作品は、あれほど手をかけ彼女の個性を対象に入れ込んでいるにもかかわらず、自我は見当たらず、鉱物、植物、海藻、虫、海洋生物ともいえるような、リアリティをもった、しかし、どこにも見当たらない「もの」になっています。

略歴
1972 兵庫県生まれ
1993 武蔵野美術大学短期大学部工芸デザイン科陶磁コース卒業
1995 武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科 クラフトデザイン
専攻陶磁コース卒業
1997 京都市立芸術大学大学院美術研究科工芸専攻陶磁器修了

主な展覧会歴
1993 朝日現代クラフト展優秀賞(梅田・有楽町 阪急)

1994 朝日現代クラフト展入選(梅田・有楽町 阪急)

1995 芸術祭典・京 (京都 藤井大丸 地下ショウウインドウ)
1996 LOVE300展 (京都・ギャラリーはねうさぎ)
1997 今田美奈子お菓子教室20周年記念祝賀晩餐会
(日仏生活芸術協会仏政府公認設立5周年)出品(東京・帝国ホテル)
1998 粒々のキラキラ河合匡代・稲崎栄利子陶2人展(京都・ギャラリーそわか) 
1998 「稲崎栄利子展」(INAXガレリア・セラミカ/東京)
2003 「第37回女流陶芸」朝日新聞社賞
2004 「第42回朝日陶芸展」秀作賞
2005 「第7回国際陶磁器展美濃」銅賞
2007 個展(目黒陶芸館/三重)
2009 「21世紀を担う女性陶芸家たち」(パラミタ ミュージアム/三重)

小島 修
小島修は対象が持つ特徴の多くを受け入れます。見つけてきた粘土の塊の形そのままに、ガラスを施して、焼いたもの。しかし、その組み合わせや焼き方には彼自身のこだわりがあります。

荒々しい土と繊細で透明なガラスの脆さ、土の不動性とガラスの流動性、あるいは、朽ち逝く塊と一瞬の煌めきといったものでしょうか、相反する要素が一つの作品の中に同居します。この土を選び、このガラスを選んだこともまた、彼の個性の一面なのですが、初めからできる限り自我を反影させない制作方法の中で、二つの相反する要素が不思議なエネルギーを発して、ひとつの「もの」を生み出します。

略歴
1973 福井県生まれ
1995 京都精華大学美術学部造形学科卒業
1995 滋賀県立陶芸の森に研修生として滞在制作
1996 京都 宮永東山(理吉)氏のアシスタントとして働く
1997 アメリカ モンタナ州ヘレナ アーチーブレイファウンデイションに研修生として滞在制作
1998 アメリカ アリゾナ州立大学に研修生として滞在制作
2002 滋賀県立陶芸の森に嘱託職員として勤務(2007年3月まで)

個展
1995 京都 ギャラリー紅
1995 京都 ギャラリーマロニエ
1997 アメリカ モンタナ州 マラノイセンター
2003 東京 コンテンポラリーアートNIKI(銀座)
2005 信楽 ギャラリー陶園
2007 京都 ギャラリーRaku(京都造形芸術大学)
2007 信楽 ギャラリー陶園(第17回秀明文化基金受賞記念展)
2008 常滑 INAXライブミュージアム(2008やきもの新感覚シリーズ70th小島修展―陶塊のきらめき)
東京 INAXガレリアセラミカ ―陶塊のきらめき―小島修展(京橋)

グループ展 その他
1996 滋賀県立陶芸の森陶芸館 森で生まれた作品展
1997 アメリカ モンタナ州 アーチーブレイファンデイション
アニアルレジデンスエキシビジョン
1997 アメリカ モンタナ州 ホワイトフィシュギャラリー
アーチーブレイ1997レジデンスショウ
1998 第5回国際陶磁器展美濃’98 入選
2000 土岐市 現代茶陶展 入選 
2004 アメリカ ニューヨ―ク ギャラリーミリュー  AC DIDN’T FIT IN MY WINDOW
2004 東京 NIKIギャラリー册(千鳥ヶ淵)書・册あるいは机上空間のためのオブジェ展XI`04
2004 台湾 台北縣立鶯歌陶器博物館 セラミックフェスティバル
2005 第7回国際陶磁器展美濃’05 銅賞
2005 滋賀県立陶芸の森陶芸館 湖国を彩るやきもの[特別展]滋賀県の陶芸家
2006 秀明文化財団 第17回秀明文化基金賞受賞
2006 滋賀県立陶芸の森陶芸館 信楽を訪れた594人の陶芸家たち
2007 ベルギー ゲント セントルカス美術学校陶芸科にてレクチャー開催
2007 笠間 回廊ギャラリー門
2007 京都造形芸術大学 座談会「現代における陶芸」を開催(松井利夫×杉山道夫×小島修)
2008 台湾 国立台南芸術大学にてワークショップとレクチャー開催
2009 信楽 ギャラリー陶園 秀明文化基金賞受賞者秀作展 
2009 東京 INAXガレリアセラミカ セラミカの夏―器・小さなオブジェ・道具たちー展(京橋)
2009 常滑 INAXライブミュージアム(2008やきもの新感覚シリーズ80thガレリアセラミカの11人展

コレクション
滋賀県立陶芸の森(創作研修課)、台北縣立陶磁器博物館、アーチ―ブレイファンデイション、秀明文化財団、INAXライブミュージアム

全文提供: ギャラリーすずき


会期: 2011年12月6日(火)〜2011年12月11日(日)
会場: ギャラリーすずき

最終更新 2011年 12月 06日
 

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