展覧会
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執筆: 記事中参照
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公開日: 2011年 9月 21日 |
妻木良三(つまきりょうぞう) 1974年 和歌山県湯浅町生まれ 現在 浄土真宗本願寺派 僧侶 今春 ドイツ ミュンヘンでの展覧会「PRIZMA」への参加。また 青山スパイラルでの「巧術」展 等の参加を 経て 今回は 当ビル全室にて 展示 09年 浅草橋ラディウム・レントゲンヴェルケでの「境景」展 以来、東京以外では 初の個展となります。
「溶け出す風景、世界のはじまり」 小金沢 智(世田谷美術館学芸員)
私たちは望遠鏡を覗きこむように、そこに描かれているものをじっと見つめる。風景画のように見えるその描画内容はしかし、きわめて現実離れしている。尖形の山々らしきものがそこかしこに聳えながら、全体がとろとろと溶け出し、それでいてそのまま隆起しているような、えも言われぬ描写である。円形のフォーマットは描画の曲線を強調し、線は一所に留まらず動き続ける。
妻木良三の作品は、鉛筆という多くの人にとって身近な画材が用いられながら、描かれているものはそれがはたしてなにを表しているのか決して判然としない。ではまったく馴染みがないかと問われればそうではなく、むしろどこか懐かしい心地がし、生々しい。だがその原因は、個々人の具体的な体験に基づくというよりは、私たちの生命としてのより原始的なところに根ざしているように思われる。
すなわち妻木が描いているものは、風景が確固たるかたちとして立ち上がる以前の、未だ世界からその名を与えられていない朧な存在なのである。いわば、風景の原始とでも呼びたくなるなにか。作品を見るとき、私たちは生まれる前のごとく世界のどこにも属さずに、世界のはじまりの瞬間に立ち会っている。
全文提供: Onomachi α
会期: 2011年9月23日(金)〜10月10日(月)水曜休み、10月1日(土)21:00まで営業 会場: Onomachi α
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最終更新 2011年 9月 23日 |