ヴァルダ・カイヴァーノ:ザ・インナー・ミー |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 9月 09日 |
ヴァルダ・カイヴァーノのペインティングは、想像を押し広げるような力をもっています。それらは魅惑的でありながら、安易な解釈が不可能であるからです。即興性と方向性、抽象と具象、物質性と幻想性。これらが同居する彼女の作品は、意図的に未完にとどめられることによって、限りない可能性を与えられます。カイヴァーノにとってペインティングとは、「イメージを問う一つの方法」であり、そこでは「視覚的なオブジェクトが隠された深部をともない、ある種の反理性的な真実を明るみにする」のです(作家談)。いかに描くか —— 子供のように、あるいは新しい料理をつくりだすように、と彼女は表現しますが ——、そのプロセスがカイヴァーノの作品の核なのです。そうして生み出された、決して尽きることのないように思えるテクスチュア、色調、筆触は、豊かな叙情性にあふれています。美術史を学んだカイヴァーノはまた、「筆をとるということは、アートの歴史を呼び起こすことであり、他のアーティストとの対話である」といいます。その対話によって彼女は、よりはっきりと自身の内的な声やエネルギーを獲得しているのでしょう。カイヴァーノの探求は、終わることがないように思えるからこそより興味深く、鑑賞者がペインティングと結ぶ関係をも自由にするのかもしれません。 カイヴァーノにとって展示スペースは、ペインティングがどうとらえられるかを左右するフレームのようなものです。彼女の比較的小さい作品は、それぞれがどのように関係し、対話し、問題を提起し、それを解決するかを考慮して展示されます。今回は約13点、日本においては初の展示です。どうぞご高覧ください。 作家プロフィール 全文提供: 小山登美夫ギャラリー |
最終更新 2009年 9月 11日 |
展示空間に入ったとき、空間は普段とは異なる空気に満ちていた。それは、本展のためにライトベージュに塗り替えられた壁が異なる印象を与えているせいかもしれない。 そして、展示されている作品はどれも小ぶりな作品である。それらが柔らかな照明のもと、適切な間隔を保ち、あるべき場所に収まっている。すると、私たちの意識と身体はヴァルダの創出する絵画空間の中にいつのまにかいることに気がつくことだろう。 そう、ここは絵画と私たちの対話の場なのである。絵画に折り込まれた時間と思索の厚みが、私たち固有の時間と同調し、新たな想像/創造の世界へと誘う場なのである。