竹村京:見知らぬあなたへ |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2012年 2月 05日 |
タカ・イシイギャラリー(東京・清澄)は、1月21日(土)から2月11 日(土)まで、竹村京 新作展「見知らぬあなたへ」を開催致します。ベルリンを拠点に活動する竹村京の3 度目の個展となる本展では、新作のドローイング、椅子やテーブル、クローゼットによって構成された家具のインスタレーション「prosaic verse」を発表いたします。また、刺繍と写真を重ねた大きな平面作品「Blocks in my Head and Berlin」、竹村の父方の祖母の家と実家の間に立つ木についての刺繍作品「between tree, ghost has come」を展示いたします。その他、平面作品を合わせたインスタレーション「in such a small world」や、最新の立体作品の修復シリーズを発表いたします。 市場で見つけた何百枚もの写真から、竹村自身が一種の既視感を感じたシーンを切り出して集めたドローイングの散文詩「prosaic verse」。この作品は竹村の祖母が幼少期を過ごした戦前の1920 年代から始まり、自身が幼少期を過ごした1980 年代の写真を元としています。同年代に作られたそれぞれの写真は被写体となっているものや人物が存在した「場」として相応しいと作家が感じた写真立てに収められています。また、同様に相応しいと思われた既視感のある机、椅子、本棚がその写真立てが存在する空間として選ばれています。「見知らぬ彼らの人生を写し取るプロセスにおいて、彼らの家においてあるものがさも自分の人生の中に存在したかのような感覚を自分に起こさせたのかもしれない」と竹村は言います。 「Blocks in my head and Berlin」と題された刺繍と写真を重ねた大きな平面作品は、壊された竹村の父方の祖母の家の跡地に建てられたコンクリートのブロックを思い出し、縫い起した壁のポートレートです。感覚的にブロックの組み合わせを配置することによって完成した「壁」は、作家が日々垣間見るベルリンのブロック塀と相似しています。作家の記憶は、それひとつで成立しているものではなく、紡がれた糸を辿る他者の記憶と交差し、しだいにその境 界を越えて、見知らぬ人々をも巻き込みうる普遍的な記憶を呼び起こすことを試みています。 刺繍作品の「between tree, ghost has come」は「親愛なるあなたのために」展(2004 年、タカ・イシイギャラリー、東京・清澄)にて発表した作品「To remember the grandmother room」と対しています。2004 年の作品で竹村が扱ったのは母方の祖母の家でしたが、今回の作品は父方の祖母の家と実家の間に立つ木を主題としており、重なり合うイメージと刺繍を通して竹村は観賞者の中に別の場所に存在した空間、そこに漂う記憶を呼び起こします。 本展の出展作品の多くは写真や描かれたドローイングの上に刺繍を施した布を重ねています。刺繍をするという行為は、竹村にとって「仮に」という状態を作りだすことを意図しており、既に存在しないものや記憶のかけらをより具体的な存在へと昇華させます。また、共に生きる人々の時間や風景の中から自分の記憶と重なるシーンを取り上げ、そこへ彼女自身の歴史を作品の対象に重ね完成されます。オーガンジーの布を通して光が落ち、刺繍の影と写真や描かれたドローイングの線が重なりあうとき、光と未完成の線の関係性を通して、場の記憶が強く呼び起こされます。それは作家の本人の記憶であると同時に、幾万人もの「見知らぬあなた」の回想や体験を描き出しています。竹村京の最新作を是非この機会にご高覧ください。 [作家コメント] [作家プロフィール] 全文提供:タカ・イシイギャラリー 会期:2012年1月21日(土)~2012年2月11日(土) |
最終更新 2012年 1月 21日 |