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三つのステップでアートの波を―10月3日(土)、藤沢市に新しいアートスペースがオープン
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Written by KALONSNET Editor   
Published: October 02 2015
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2015年秋、神奈川県藤沢市に「藤沢市アートスペース/愛称 FAS(エファース)」がオープンする。辻堂駅北口の湘南C-Xにある「ココテラス湘南」6階を活用した、藤沢市の新しい美術振興施設だ。若手アーティストの支援や様々なジャンルの企画展、ワークショップ、講座などの拠点となる。

10月3日(土)からは、オープニングを記念し、特別展覧会「From now on!! 藤沢発、アートのこれから」展が開催される。

第1期(10月3日~11月3日)は、「Visualize―それぞれの心象風景」と題し、藤沢ゆかりの若手アーティストたちが藤沢のイメージを作品にする。例えば麻生知子の絵画《遊具》は、地元の人が見ればわかるが、辻堂海浜公園にあるタコの滑り台をモチーフにしている。タコなのに青い色といい、宇宙人のような2本のアンテナといい、不思議な代物だ。麻生は、遊具が砂浜で風雨にさらされることによって生まれた淡いブルーの色彩を生かし、影法師のような子どもたちの姿を俯瞰的に捉えることによって、ノスタルジックな情景を描き出した。それぞれのアーティストが、藤沢をどう表現するかが見どころだ。(参加アーティスト:麻生知子、漆原夏樹、松浦歩、米山幸助)

第2期(11月7日~12月6日)は「Tri-Angle―作品との対話」と題し、アーティストに「鑑賞者の関与を促す作品」の制作を依頼し、展示する。会期中に鑑賞者の手が加わって変化し続ける作品や、鑑賞者ごとのアクションに対して異なるリアクションのある作品などが登場する。(参加アーティスト:江川純太、柵瀨茉莉子、新澤悟郎)

第3期は(12月12日~2016年1月17日)は「Discovery―特別な場所」と題し、展示空間をも作品に内包するインスタレーション作品を展示する。アーティストたちはアートスペース内のギャラリーや倉庫など様々な場所を活用し、その構造を生かした「ここでしかできない」展示に工夫を凝らす。(参加アーティスト:池田拓馬、内田聡)

3期にわたる開館記念展のねらいは、「地元をテーマにした作品を観賞してアートに関心を持つ」(第1期)⇒「アートは鑑賞するだけでなく自分も参加できることに気付く」(第2期)⇒「このアートスペースを使って何ができるか考える」(第3期)という段階を踏んで、見る者を徐々に巻き込んでいくことにある。

そもそも藤沢市民にとって、アートは近くて遠い存在だ。アーティストもその卵も、アート愛好者もその予備軍も、市内には沢山住んでいる。しかし、近隣の東京や横浜に出れば発表の場にも鑑賞の場にも不自由しないがゆえに、地元でのアート活動には結びつきにくい。これは、大都市圏の市町村が共通して抱える課題だろう。立派な施設を作っても、活用されなければ意味がない。「最先端のアートはここではなく余所でつくられるもの」という市民の固定観念を緩めていくことが、地方自治体の手掛けるアート振興策の役割だといえる。

参加する若手アーティストを支援する上でも、三つのステップは重要な意味を持つ。資金をふんだんに与えて自由に制作させることだけが手厚い支援ではない。「誰のために、どのような手段で、何を達成するのか」という明確な目標を共有し、期ごとに自身が果たす役割を意識しながら制作する経験から得られるものは大きいだろう。

参考画像は展示前のまっさらなスペースだが、これからの展覧会でどのように変化していくのか楽しみだ。会期中は参加アーティストを迎えたトークイベントやワークショップも開かれる。

藤沢市民もそうでない人も、秋冬はアートの波を感じに辻堂へ出かけてみよう。巻き込まれ、いつか波を起こす側になるかもしれない。


参考サイト:藤沢市アートスペース 
http://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/bunka/FAS/index.html

Photo by Ayumi Matsuura

Last Updated on October 27 2015
 

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